確かな演技力で、ドラマ、映画、舞台とフィールドを越えて活躍中の岸井ゆきの。4月スタートのドラマ『恋は闇』(日本テレビ系)では志尊淳とW主演を務める。この2年の間で映画やドラマで演じたキャラは、元天才科学者、終末期病棟の看護師、皇女、老舗玩具メーカー社長、元ヤンのタクシードライバー、聴覚障害を持つプロボクサー……と実に多彩である。これだけの役をこなせるのは俳優として15年のキャリアが生み出した結果なのであろう。そんな岸井ゆきのにとっての”THE CHANGE”とは──。【第1回/全2回】

岸井ゆきの 撮影/冨田望

 デニムの上下をカジュアルに着こなし、現場に現れた岸井さん。自然体で飾らない人柄が感じとれる。高校生のときに電車の中でスカウトされ、2009年にドラマ『小公女セイラ』(TBS系)で俳優としての一歩を踏み出した。

「19歳の時でした。それまで色んなオーディションを受けては落ちるというのが続いていたんです。受かったとしても、セリフのない役だったり……。私、それでいいのかなって。その当時はセリフのない俳優に対しての扱いって今とは全く違っていて。“背景としていてくれ”というような感覚があったんです。いまはもちろん、そんなことはないですけど。私自身もお芝居というもの自体がよく分かっていなかったんだと思います」

 その後、自ら、ワークショップに参加するようになった。観劇が好きだった岸井さんは、行った先の劇場でチラシを手に入れた。そこにはオーディションの情報がたくさん書かれていた。

「当時は、劇団員募集や次回公演の出演者募集ってオーデイションもワークショップ形式のものが多かったんです。映像のオーディションのように一日でやって落とされるという感じではなく、ワークショップを経てちゃんとお芝居をひとつ作って、そのうえで評価されたんですよ。結果として“今回は役に合わなかったね”って落とされたりもするんですけど、そういう経験をしながら少しずつお芝居を知っていたんです」