モノ作りをするということが好きなんだって
そこで岸井さんは芝居の何たるかを知ることが出来た。
「それまでドラマとかに端役で出させてもらったりはしていたんですけど、その作品の一部って感覚でした。本格的にお芝居をやるとか作品を作る……という感じがほぼ無かったんです。だから、ここで初めてひとつの作品を作るという枠に入れた感覚になれたといいますか。どんなに役が小さくても毎日稽古はありますし、“一緒に作っている”という感覚に強くなれたと思います。私自身、“モノ作りをするということが好きなんだ”ということを改めて知ることができました」

その後、2016年に『真田丸』、2018年には『まんぷく』でNHKの大河ドラマと連続テレビ小説にそれぞれ初出演を果たす。2019年公開の映画『愛がなんだ』では主演を務め、第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。
俳優として確実にステップ・アップを図る中で、2022年の年末に公開された映画『ケイコ 目を澄まして』で主人公の、聴覚障害を持つプロボクサー・小河ケイコを演じ、第46回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を含む、6つもの賞を受賞した。そのことで、仕事に対しての取り組み方に自身の中で変化が生まれたかと尋ねると、10数秒ほど考えて、丁寧にこう答えてくれた。
「取り組み方は変わってないですね。受賞した後も変わらずに今日までやってきた感じはあります。多くの賞を戴きましたけど、やっぱり、それは外からの評価に過ぎないと思うんです。受賞したからといって、それ以降のお芝居に変な力が入るということではないと思いますし、私自身は映画が好きで、映画作りに取り組んで来て、それで、たまたま『ケイコ』って作品を評価していただいた。そういうことだと思っています。評価してくださった方たちに対して、これからもこういう作品を届けたいという気持ちはありますが、その作品にかける熱量は受賞後もそれ以前と変わっていないと思います」
ひとつの作品にかける熱いパッション。それが岸井さんにとって俳優としての大きな原動力なのだ。
(つづく)
岸井ゆきの(きしい・ゆきの)
1992年2月11日生まれ。神奈川県出身。2009年にドラマで俳優デビュー。映画初主演となった『おじいちゃん、死んじゃったって。』(17)で第39回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞する。恋愛への執着が強いヒロインを好演した『愛がなんだ』(19)では第11回TAMA映画祭最優秀新進女優賞および第43回日本 アカデミー賞新人賞を獲得。耳の不自由なプロボクサーを演じた『ケイコ目を澄ませて』(22)では、 第46回日本アカデミー賞をはじめ、第77回毎日映画コンクールなどで数多くの主演女優賞を受賞。そのほか主な出演作には『友だちのパパが好き』(15)、『やがて海 へと届く』(22)、『神は見返りを求める』(22)、『犬も食わねどチャーリーは笑う』(22)、『アット・ザ・ベンチ』(24)など。ドラマでの近作には『日曜の夜ぐらいは…』(23)、『大奥 Season2』(23)、『お別れホスピタル』(24)がある。
●作品情報
映画『若き見知らぬ者たち』豪華版 DVD
出演:磯村勇斗 岸井ゆきの 福山翔大 染谷将太 伊島空 長井短 東龍之介 松田航輝 尾上寛之 カトウシンスケ ファビオ・ハラダ 大鷹明良 滝藤賢一 / 豊原功補 霧島れいか
原案・脚本・監督:内山拓也
リリース日:2025年04月11日
価格:¥6,600(税抜価格 ¥6,000)
発売元:TCエンタテインメント
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