子役として活躍し、上京後、蜷川幸雄のもとで舞台俳優として活動するかたわら、NHKの人形劇『プルルくん』をきっかけに声優デビューをした、アニメ『タッチ』の上杉達也役などで知られる三ツ矢雄二。これまでに劇団の主宰、脚本家、演出家、編集者などマルチな才能を発揮する彼のTHE CHANGEとはーー。【第1回/全2回】

三ツ矢雄二 撮影/角田忠良

 僕はもともと声優を目指したわけではありませんでした。この世界に入るきっかけは、10歳のときに、名古屋ローカルの“ちびっこのど自慢”のような番組に出たことです。そのとき、審査員の先生に「キミの声はオペラに向いているかもしれない」と言われたんです。「オペラとは何だろう?」と思って調べると、歌いながら芝居もするものだと分かる。それなら芝居も学ぶ必要があると思い、児童劇団に入ることにします。

 すぐに仕事が決まり、ずっとドラマの子役をしていました。12歳のときは、NHK名古屋制作のドラマ『海からきた平太』で、1年間主役を務めました。以後は東京や大阪、京都の撮影所や放送局に呼ばれることが増え、中学・高校の授業にはほとんど出られない日々が続きました。

 しかし、僕は小柄なので、相手役の女性より身長の低いことがあり、オーディションで役に合わないと判断されることが増えていきました。

「俳優としてやっていけるかな」と思いながらも、「それでもこの業界にはいたい」と考え、裏方の勉強をするために、高校卒業後は上京して映像クリエイターの学校に入りました。

 2年間、脚本や演出の勉強をしましたが、僕は普通の学生のような生活をしてこなかったため、若い人の心理的な揺らぎを理解できず、いい脚本が書けなかったんです。
「もっと人生経験を積まなければ」と思い今度は大学に入り、大人の考え方や社会の仕組みを学びました。

 また、紹介してもらった演出家の蜷川幸雄さんの事務所に所属して芝居を勉強します。蜷川さんは非常に厳しい方で、稽古中に灰皿が飛んでくるという噂もありましたが、それは事実でしたね。でも、あの経験は大きな財産です。