野沢雅子さんとご一緒できたことは本当に幸運でした
同時期に、「人形劇の声の仕事をやらないか?」というお話をいただき、「月に1回の収録なら、やってみよう」と思い、声優の世界に足を踏み入れることになります。
その流れで、『超電磁ロボコン・バトラーV』(テレビ朝日系)というロボットアニメのオーディションを受けたところ、いきなり、主役に受かってしまったんです。
当時は声優学校などなく、誰も教えてくれない。事前に1回だけ『宇宙戦艦ヤマト』(日本テレビ系)のアフレコを見学させてもらっただけで、何も分からないままスタジオに入りました。そんな中、共演者の野沢雅子さんが基本的なことを丁寧に指導くださいました。野沢さんとご一緒できたことは本当に幸運でした。
以降、指名で役をもらうことが増えていき「もうすっかり声優なんだな」と思うようになった頃、蜷川さんの事務所のマネージャーからの進言で、大手声優プロに移りました。僕にとって印象深かったが1981年に『六神合体ゴッドマーズ』(日本テレビ系)という作品で、主人公の双子の兄、マーグというキャラクターを演じたことです。
マーグは特に女性ファンから絶大な人気を得ました。途中で死ぬ設定でしたが、「死なせないで」と署名活動が行われましたし、お葬式が行われたほどです。しかも、あまりの人気だったので、マーグは生き返ったんです!
声優として忙しい毎日でしたが、「何のために東京に出てきたのか?」と改めて思い返すと、「もともと舞台をやりたかったのだ」と気づきました。そこでスケジュールを調整し、1か月だけアメリカへ行き、毎日、本場のブロードウェイミュージカルを観続けたこともあります。
(つづく)
三ツ矢雄二(みつやゆうじ)
1954年10月18日、愛知県生まれ。子役として活躍し、上京後、蜷川幸雄のもとで舞台俳優として活動するかたわら、NHKの人形劇『プルルくん』をきっかけに声優デビュー。さらに、劇団の主宰、脚本家、演出家、編集者などマルチな才能を発揮する。現在はColoso.(動画配信サイト)にて「三ツ矢雄二の声優予備校」を配信中。近著に『曲のない詞』(ネルケプランニング)。