初めてプライベートがニュースに

──記憶に残っている事とは?

「不安もあれば葛藤もあって。それまで自分がニュースになるというのは作品のことだけでした。だから、プライベートがニュースになるというのは初めてのことだったんです。その時、“一般人である大事な人をどうやって守るのか”とか色々と考えました。自分にとって大切なものが増えるって、こんなにも怖いことなんだなって。自分のことは自分で守る術がどんどん身に付いていた頃でもあったんですけど、普通の人がそういうことになった時にパニックになったり怖いって思う気持ちを自分では緩和できなくて。“こんなにも迷惑かけちゃう、どう守ってあげたら良いんだろう”とか、“これで子供が出来たらどうなるんだろう”とかいう不安があったんです。嬉しさもあれば、これが責任というものなのかなとか、結婚というものの重さなのかなとか。そういった色々なことを身をもって体感していた時期だったと思います」

 2017年には第一子で男の子を、2020年には第二子で女の子を出産し、今ではすっかり母としての顔も持つ。

「それまでは、自分の価値観だけで生きてきたなって思いました。私は子供の頃、両親や姉から『頑固ちゃん』って呼ばれるくらい頑固だったんです。でも、“譲れないところって良いところじゃん”って開き直っていた部分があったんですけど、そういう自分の価値観ってほんとに要らないものなんだなって子育てを通して気付かされたんです。常識をもっと身に付けたいとも思わせてくれたので、今までにない気持ちにさせてくれるのが子供だったり子育てなのかなって思います」

──自分の価値観だけで生きてきた……ということですが、それは自分勝手という言葉に置き換えても良いんですか。

「自分の好きなようにして、ほんとに自分勝手に生きてきたんだと思います(苦笑)。それまでは話し合いの中で自分の意見はしっかり伝えて……というタイプだったんですけど、自分が大人になったからなのか、結婚して子供が出来て子供が成長した上でそうなったのかはわかりませんが、自分じゃない人間を育てていく中で、自分はこう思っているからこうじゃない……って言ったり伝えたりするのって良くないかなって思うようになりました。100%相手の意向に沿うことも時には大事なんだな……って思うことも多くて。
 今までの人生の中で、色々な人たちに出会って、ここが良いな、ああいう風になりたいなってことを学んできたはずなんだけど、現実はそうではなかったんですね。今は身をもって学ばせてもらっている、勉強させてもらっているという感じがすごくするんです。つまり、子育てをしながら、自分が変わらなきゃいけないことを見つけさせてくれる……という感じなんです」

(つづく)

相武紗季(あいぶ・さき)
​1985年6月20日、兵庫県生まれ。O型。2003年、ドラマ『WATER BOYS』で俳優デビュー。翌2004年に出演した「ミスタードーナツ」のCMが話題になる。以降、多くのドラマや映画に出演。最新作にNHK朝ドラ『おむすび』、『リバーサルオーケストラ』、『ラストマン‐全盲の捜査官‐』など。

【作品情報】
ドラマプレミア23『夫よ、死んでくれないか』
毎週月曜、夜11時6分よりテレビ東京系にて放映中。
原作:丸山正樹『夫よ、死んでくれないか』(双葉文庫刊)
主演:安達祐実 相武紗季 磯山さやか 竹財輝之助 高橋光臣 塚本高史
脚本:的場友見
監督:佐藤竜憲 進藤丈広 柿原利幸
(c)「夫よ、死んでくれないか」製作委員会