フリーアナウンサーの堀井美香さんがTBSを退社したのは昨年、50歳の時。ニュースやナレーションなどで安定感のある読みを見せる一方、永六輔さんや久米宏さん(78)など、ラジオの名パーソナリティたちのアシスタントでは天然な性格がたびたび披露され、多くのリスナーから愛されていた堀井さん。女子アナブーム真っ只中で入社してから、現在のフリーに至るまで、女性アナウンサーとして体験してきた「CHANGE」を聞いてみた。
 

堀井美香 撮影/三浦龍司

朗読、言葉に対する気持ちの変化

 堀井美香さんがTBS在籍時代から取り組んでいるものに、朗読がある。フリーになった現在も自身が主催する朗読会は活動の柱になっているが、ある1冊の本との出会いが、朗読に対する思いを深めてくれたという。

堀井「若松英輔さんの『藍色の福音』(講談社)です。自分の言葉について、考えさせられました。内在化された意識というか、自分の中にあるものをちゃんと取り入れて、自分で言葉を読み解く力を鍛錬する、というようなことを、すごく丁寧に書かれていたんです。自分が朗読していくうえで、ちゃんと記憶に残しておきたいという本でした」

 朗読は芝居とは違って、表情や体の動き、衣装などで表現をすることができない。声と言葉だけ。それもあり、言葉に対してどう対峙するかは、表現においてとても重要になる。

堀井「今まで朗読をやりながらも、この真に迫れない感じってなんだろうと、感じることがあったんです。うまくやれるし、うまく聞いてもらえるように表現することはできるんだけど、そこの手応えはいまひとつなくて。若松さんの本を読んだときに、どこをもうちょっと考えたり、どこに力を注ぐべきなのかというのが、ちょっとわかった気になりましたね」

 1冊の本が、言葉への向き合い方の変化をもたらした。堀井さんの朗読も変わっていくことだろう。