桑原亮子さんの人生最大の危機を支えた「ドラマ」

 桑原さんに「映画、音楽、漫画、小説、ドラマ、絵画」などの創作物で、重要な変化をもたらしたと思うもの」について質問すると、「ドラマ」が人生における危機を支えてくれたと明かしてくれた。

「ドラマです。私の人生で最大の危機は、小学校六年生の頃から少しずつ耳が聴こえなくなっていったことだと思います。怖くて不安で、途方に暮れる日々でした。

 それでもドラマを観ている間は現実から離れ、不安な気持ちを忘れることができました。特定のドラマではなく、多くのドラマから力をもらっていました。いまドラマの脚本を書いているのは、あの頃ドラマに助けられた記憶があるからです」

 最後に、『双葉社 THE CHANGE』がテーマとしている 「変わる」「CHANGE」という単語から桑原さんが連想する言葉をたずねた。

「 “新しい自分”です。周囲の人々や世界を変えていくのは難しいですが、自分を変えることだけは、今この瞬間からも可能です。いつだって自分を変えていけるのだということは、誰にも奪えない希望だと思います」

『舞いあがれ!』では、さまざまな壁にぶつかりながらも懸命に日々を生きる登場人物の姿が描かれたが、彼らのまっすぐな姿と桑原さんが重なるようだった。

■桑原亮子(くわはら・りょうこ)
 脚本家、歌人。京都府出身。2013年、『星と絵葉書』で第41回創作ラジオドラマ大賞で奨励賞受賞。その後、NHK-FMでラジオドラマの脚本を多数執筆。20年のNHK土曜ドラマ『心の傷を癒すということ』、よるドラ『彼女が成仏できない理由』などののち、NHK22年後期の連続テレビ小説『舞いあがれ!』の脚本をつとめた。著書に「トビウオが飛ぶとき 『舞いあがれ!』アンソロジー」(KADOKAWA)。