なにしてんねやろ、俺

「ほんでね、“人差し指のさきっちょから、赤いレーザー光線が出て、そのレーザーの宝のありかを教えてくれる。宝箱まで誘導してくれるんだ”つって、”あっちや”とか言いながら僕はふらふら歩き出したんです。2人から“おお、気ぃつけて行ってこいよ”って言われたんです。それでこう、ふらふらしながら廃墟の左曲がった瞬間ーーッ!」
チャンス大城さんは、全力で走った。
「涙がね、止まらなかったっす」
ーーなんの涙ですか?
「なにしてんねやろ、俺、って。同期はみんな吉本で頑張ってるのに、って。で、帰って1時間くらいしたら、2人が僕の家に来たんです。居留守使って、父親に“いないって言ってくれ”って言って、父親が“いないぞ”って。ほんで父親が“2人、帰ったぞ。なんか言うとったぞ”っつって」
ーー2人はなんと言っていたんですか?
「"宝箱、ひとりじめすんじゃねーぞ”って」
話し終えるとチャンス大城さんは「この話を入れ忘れました」と締めくくった。
幽霊の話かと思い聞き入っていたら、幽霊は出てこなかった。一体なんの話だろうと考える間もなく、「なにそれ!」と笑いが止まらない。
「いや怖かったすね。本気で信じてんだ、宝物があるって、と思って」
どこにも分類されないが確かに怖い話ではあるチャンス大城さんの話だが、本書にはバラエティに飛んだ心霊体験や人間の怖い話がいくつも収録され、昨今ブームとなっているような芸人怪談師として語れるほどだ。
「いや、僕は自分が弱っているときしか霊が見えないんですよ。見ようと思っても見えないし、ずっと見れるわけじゃないから,心霊芸人としては自分を売りたくないと思っていたんです。いろんな人に取材してまで喋ろうとも思わないですし」
だからこそ、正真正銘の実体験だけしか喋らない。チャンス大城さんは、昔も、そしてこれからも、"芸人”として喋り続ける。
(つづく)
チャンス大城(ちゃんす・おおしろ)
1975年1月22日生まれ、兵庫県出身。14歳のときに、1歳サバを読みNSC大阪校8期生として入学するものちに中退。高校卒業後に同13期生として再入学。フリーとなり長く地下芸人生活を送り、2017年12月放送『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の『第23回細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』で小出真保とともに優勝。翌1月放送『人志松本のすべらない話』(同)に出演しその名が轟く。近年は『水曜日のダウンタウン』(TBS系)などで活躍。R-1グランプリ2025ファイナリスト。
『チャンス大城の霊怖 人怖』出版記念イベント
東京:5月18日(日)18時~(開場17時45分) 芳林堂書店高田馬場店
https://www.horindo.co.jp/t20250518/