野球を辞めた途端に身長が伸びた

 以降、早朝起きる必要がなくなった。すると皮肉なことに、身長がぐんぐん伸びたのだという。

「土日は起こされなければ1日中寝ていました。毎日毎日、いくら寝ても眠いんですよ。当時160cmから20cmくらい伸びて、睡眠って大事だなってすごく思いました」

ーー辞めた途端、成長ホルモンが活性化したんですね。

「このときに体型がCHANGEするんです。それまではちょっとぽちゃぽちゃしていたけど、身長が伸びたおかげでシュッと見えるようになって。僕が高校生のとき、父が通っていた洋服屋の社長さんがサンミュージック所属のお笑い芸人の方でした。あるとき父と一緒にお店に行くと"きみは芸能活動絶対向いてると思う。やったほうがいいよ”と言われて、事務所に連れていってもらうことになったんです」

 軽い気持ちで会議室のドアを開けると、10人以上の大人がずらりと並び、カメラが2台ほど平野さんを捕らえていた。

「自分なんか入れるなんて思っていないから、学校帰りに制服のまま来たんです。そしたら急に面接が始まって、みんなムッとした表情に見えたから、高校生にとってはめちゃくちゃ怖かったです。“なぜ芸能界に入りたいと思ったんですか?”と聞かれましたが、いやいや誘われたからですよ、と内心思いつつ、当時はサンミュージックにベッキーさんが所属していたので“ベッキーさんに会いたいからです”と答えました」

ーー頑張って考えたんですね。

「それがあほに思われたのかわからないですけど、それで所属ということになりました。だから、洋服屋の社長さんに会ったことも大きな転機です」

 現在、リログループの新卒採用に関するウェブショートムービーで野球部員を演じている平野さん。レギュラーメンバーに選ばれず、葛藤を抱えつつも球拾いや応援ダンスの練習に力を入れ、試合中には目に涙を溜めながらレギュラーメンバーへ声援を送るその姿に、平野さんのインスタグラムコメント欄は「泣けました」「野球部のストーリーというのもさすが似合いすぎ」「とても素敵なストーリーで、胸がアツくなりました」「ショートムービーなのに感動しちゃった」という声が届いた。

 初めての挫折はたしかに、平野さんの糧になっている。

(つづく)

平野宏周(ひらの・こうしゅう)
1999年4月1日生まれ、神奈川県出身。小・中学は野球に打ち込み、高校在学中の2015年にデビュー。2020年6月放送の特撮ドラマ『ウルトラマンZ』(テレビ東京系)で主演に抜擢される。昨年はドラマ『相棒season23』(テレビ朝日系)等に出演、今年は話題の映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』に出演した。主要キャストを演じた映画『シーシュポスたちのまなざし』や『Zライフクライシス』など、主演作を含む6作品の公開が今後控える。

【衣装クレジット】
・FORTUNA HOMME
・NEPHOLOGIST

【作品情報】
ドラマ『被写界深度』(FOD)
主演: 宇佐卓真、平野宏周
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/hisyakaishindo/