小説家、藤岡陽子さんの信条は「努力はいつか必ず報われる」。昨年は『リラの花咲くけものみち』(光文社)で第45回吉川英治文学新人賞を受賞した。最新作『僕たちは我慢している』(COMPASS)を上梓した藤岡さんに、これまでの「THE CHANGE」を聞いた。【第3回/全3回】

藤岡陽子 撮影/有坂政晴

 光文社の編集者だった大久保雄策さんから「長編を書いてみませんか」と言われた藤岡さんは、看護学校を舞台に学生たちの夢と希望を描いた『いつまでも白い羽根』を書き、38歳でデビューした。

「これを書くために、2番目の子は生後4か月で保育園に入れました。保育園に入れるためには働いていないといけないので、クリニックで看護師の仕事もしました。大変でしたね。振り返ると、体力があったなと思います。小説家になりたい、物語を書きたいという一心でした」

 デビュー作は「売れなかった」というが、コツコツと書き続け、デビューから15年たった昨年、『リラの花咲くけものみち』で吉川英治文学新人賞を受賞した。52歳だった。

 新刊『僕たちは我慢している』は大久保さんと共につくった8作目になる。定年退職後は小説専門の出版社を設立したい、その時は第1弾を藤岡さんにお願いしたい、という話は、実際に大久保さんが定年退職した2018年より前から聞いていたという。

「結構プレッシャーでしたよ。それなら自分の知名度を上げて、新しい出版社を盛り上げたいとも思って書き続けてきました。今回、大久保さんとこうして出版社の立ち上げに挑戦すること自体が物語だなと感じています」