ドキリとさせる、射貫くような強い瞳を持つ田中麗奈。1998年に公開されたデビュー作にして主演を務めた『がんばっていきまっしょい』で、日本アカデミー賞、ブルーリボン賞、キネマ旬報ベスト・テンをはじめ、国内の新人賞を総なめにした。同年からスタートしたジュースCMの初代“なっちゃん”としても人気に火が付き、長く親しまれることに。近年では『幼な子われらに生まれ』『福田村事件』、朝ドラ『ブギウギ』、ドラマ『神の子はつぶやく』といった多くの作品で印象を残し、深みを増している田中さんがTHE CHANGEを語る。【第3回/全4回】

田中麗奈 撮影/冨田望 ヘアメイク/八鍬麻紀 スタイリスト/岩田麻希

 最新出演作として、外山文治監督の短編映画『名前、呼んでほしい』で主演を務めている田中さん。外山監督は、映画監督になるより前に観た田中さんの主演作『東京マリーゴールド』(2001)が特に好きで、オファーしたという。

――『東京マリーゴールド』は名匠・市川準監督の作品です。林真理子さんの原作小説をベースに市川監督が脚色。味の素「ほんだし」のテレビCMを演出されていた市川監督が、田中麗奈さんと樹木希林さんの親子設定を活かして撮った映画です。

「市川監督は独特な撮り方をされるんです。特に絵コンテが有名で、CMだけでなく、映画もすべて絵コンテがあります。それを毎日渡してくださる。監督の手描きで、文字もとても独特で、役者の動きや立ち位置もすべて書いてあるのですが、逆に台本はすごく薄くて。“これで映画になるの?”という感じなんです」

――そうなんですか?

「“ここからはこういう感じで”と、セリフはアドリブのことも多くありました。長回しで足される場面も多かったです」

――『東京マリーゴールド』でもアドリブが?

「『東京マリーゴールド』もCMも。樹木希林さんから飛んでくるアドリブに、私は一生懸命対応していく感じでした。それを市川さんがモニターで見ながら“何々って言ってみて”“もう一回、そのセリフ言ってみて”と、カメラを止めないまま指示が出るんです」