1988年より小劇場を中心に俳優活動をスタートし、唯一無二の個性派俳優として幅広く活躍する温水洋一さん。彼が小劇場で芝居をはじめ、初めて映画に出演するまでに至る「THE CHANGE」とは?【第2回/全2回】

温水洋一 撮影/イシワタフミアキ

 面接は次の日でした。主宰者の松尾スズキさんと話したのは10分程度。「面白い顔をしているね」と言われたのを覚えています。そして、「明日から来てください」と。

 そのまま稽古に入り、9月の旗上げ公演に出ると、いったん名古屋に帰り、大学だけは卒業しました。草創期の大人計画は劇団員が5人しかいないこともあり、3回目の公演からはいきなり主役でした。衣装の早替えで一人22役を演じたこともあります。

 この間、たくさんの俳優や作家の方と知り合い、一緒に仕事ができたのは大きな財産です。その一人が竹中直人さん。僕が全裸に近い格好で生のサバを持って振り回す役をやった舞台を見に来てくれたんですが、これが縁で竹中さんが監督し、赤井英和さんや鈴木京香さんが出演した映画『119』に出させてもらいました。

「ヌクちゃん、まだ映画には出てないだろう?」

「はい。ぜひ出たいです」

「じゃあ、俺の映画で初出演だ」

 そんな感じで出演が決まったんですが、ロケが延び、その間に堤幸彦監督の『中指姫』という映画に出てしまいました。でも、僕の中での映画デビューは竹中さんに声を掛けてもらった『119』です。

 最近、小堺一機さんと舞台で共演した折、萩本欽一さんがこんなことを言っていたと教えてくれました。

「この仕事は運。実力があっても運がないとダメだから」

 たしかにその通りですね。僕の場合、松尾スズキさんや竹中直人さんとの出会いがそうだし、明石家さんまさんがまさにそうでした。さんまさんとは2000年にパルコ劇場の『七人ぐらいの兵士』で初共演しました。