日本初のラジオの女性DJであり、数々のヒット曲を生んだ作詞家。日本作詩家協会元会長、現顧問の音楽評論家。日本のエンタメ界を昭和・平成・令和と先導する湯川れい子さんが新著『私に起きた奇跡』を刊行した。この中で「私の仕事は、『元祖・推し活です』」と自ら評するように、エルヴィス・プレスリーをはじめ、歴史的なスーパースターを「推し」続けてきた70年余り。バイタリティ溢れる湯川さんの「推し活」ヒストリーはもちろん、昭和を彩った名曲のエピソードなどもたっぷりと語ってくれた。【第2回/全5回】

湯川れい子 撮影/有坂政晴

 湯川れい子さんの新著『私に起きた奇跡』の中ではご自身を<元祖「推し活」>と表現している。エルヴィス・プレスリーを、ビートルズを、マイケル・ジャクソンを、いち早く<推し>してきた。

「今回本の中で<元祖推し活>よ、と言っていて、それを表してる一つは、マイケル・ジャクソンの『スリラー』というアルバムの解説書だと思います。実は、『スリラー』が出た1982年当時、日本の音楽雑誌でマイケルを取り上げてくれるところがどこにもなくて。

“マイケルはジャクソン・ファイブで終わっちゃったでしょ”みたいな雰囲気だったんです。日本ではあの手のものは駄目、って感じで相手にしてもらえなくて。でも、『スリラー』の音原盤が届いて、その音を聴いたら本当に素晴らしい。だから音を聴きながら解説書を書いたんですけど、雑誌にはマイケルについて書けるところがなかったので、アルバム解説として4000字も書いたんです。

 その中で“このアルバムは必ず歴史を変える。ギネスブックの記録を塗り替える”ってことを書いているんですけれど、これは今でも自慢できると思ってます。そして実際にその通りになったんです。そういうのって<推し活>だと思ってて、理屈とかそういうのじゃなくて、これだけの音を作って、今まで人がやったことがないことをやっているんだから、このアルバムはすごい!っていうのが書きたくて書いたという感じ。私は自分が体ごと、心ごと飛びつかない限り、絶対に“いい”とは書かないというのが基本にあります。『スリラー』はまさにそれでした」