天使の役に『ベルリン、天使の詩』を想像したが…
――天使の役だと知ったときはいかがでしたか?
「天使の役というと、“いろんな映画を観て研究したんですか?”とか言われるんですけど。有名なのは『ベルリン、天使の詩』(1987年)ですよね。僕も、最初に天使と聞いたときには、病室のクローゼットの上とかに、羽根を生やした天使として座っていたりするのかなと思ったんです。でもその予想はすぐに外れました」
――(笑)。
「92歳のアヤコさんが、天使と一緒にその人生を振り返っていく、ちょっとファンタジー要素も入った作品ですと言われて。大地さんと一緒にアヤコさんの人生を振り返っていけるストーリーテラー的な役か、楽しそうだなと。でも、脚本を読み進めていったら、ここに出てくるアヤコさんって、いろいろあった人なんですよ。妻子がいる人と付き合ったりするし、その人とも結局別れちゃったり。そういう人生を一緒に聞いて、最後に天国に行くのか地獄にいくのか、天使が審判を下さなきゃいけない。“楽しいどころか、これは相当重要な役だぞ”と思いましたね」

――現場はいかがでしたか?
「僕は周りの人には見えないという設定なので、三姉妹を演じる黒谷友香さんとか鈴木砂羽さんとか、水上京香さんも現場にはいたんですけど、会話は大地さんとだけ。あと、最後の方で、アヤコさんのお父さん役だったキム兄(木村祐一)とかも走馬灯のように現れるので現場には来ていたんですけど、一緒の芝居はありませんでした」
――大地さんとは、何かエピソードはありますか?
「いろんな地方ロケなどの撮影も終わって、僕が入ったのは病院のシーンの2日間でした。僕のクランクインはお昼から。というのも、その日、病院のベッドにいるアヤコさんは90代なので、大地さんのメイクに時間がかかるだろうからということだったんです。でも11時くらいに“お久しぶりです”と入っていったら、もう大地さんが90歳のアヤコさんになってらっしゃいました。それでお昼前に1回リハーサルしたいとなったんですけど、その日のお昼はカレーだと。天使の白い衣装が汚れては困るので、着替えるのはリハーサルの後にしましょうとなりました」
――具体的な撮影秘話ですね(笑)。
「それで僕は着替える前の普段着のまま、天使がアヤコさんの前に現れる最初の場面のリハーサルをしたんです。そしたら大地さんに“それが衣装?”と言われまして。“あ、違います、違います、これはお昼がカレーだというので”とお伝えして。午後の撮影のときには、ちゃんと役衣装のスーツに着替えて入ったら、“やっぱりそうよねぇ”とお話されてました」