『ポケモン』の名前を聞くだけで、その特徴がわかる。『プリキュア』たちの名前には明らかに多く出現する音がある。『呪術廻戦』『鬼滅の刃』のキャラ名、『ドラクエ』の呪文にも法則が存在する。「にせたぬきじる」と「にせだぬきじる」の違いは小学生でも知っているーー。
おもしろすぎる日本語を分析する言語学者・川原繁人の活躍は、まさに縦横無尽だ。『フリースタイルダンジョン』に出演し、慶應義塾大学で教壇に立つ彼の「THECHANGE」とはーー。
「やっぱり『にせたぬきじる』と『にせだぬきじる』の意味の違いは、言語学への入り口としては、私にとって鉄板ネタっていうかね。日本語話者なら、濁点の有無の違いだけから、このふたつの表現の意味の違いがわかってしまう。そして、それが小学生にもわかるっていう発見が、今回私の中でとっても嬉しいことでしたね」
と、川原繁人さんは笑顔を見せた。
突然かもしれないが、この「にせたぬきじる」と「にせだぬきじる」の違いは、多くの人にはすぐにわかるだろう。
「にせたぬきじる」とは「偽物の“たぬき汁”」で、「にせだぬきじる」は「“偽だぬき”の汁」なのだが、川原さんが小学生相手に言語学の授業をした際、この濁点の有無にもとづく意味の違いは、子どもたちの多くにも理解されていた。
「にせたぬきじる」問題は、「連濁(れんだく)」という「言語学者をとりこにする」(川原さん)興味深い現象から生じている。(※記事末尾に解説を付記)
こうしたわれわれが「なんとなく」理解していることに関心を持ち、明示することも言語学者としての仕事のひとつだという。
川原さんの使う別な例として、カメラマンに質問を投げかけてみる。「大きいポケモンと小さいポケモン、2体のポケモンがいるとします。名前はどちらかがピィでどちらかがグラードンです。どちらがちっちゃいと思いますか?」
ほぼ即答でカメラマンからは「ピィがちっちゃいです」という答えが返ってきた。