男役から女優への移行、卒業後の反響は?

――宝塚卒業後も舞台にはじまり、女優として第一線で活躍し続けています。特に『風とともに去りぬ』のスカーレットや『マイ・フェア・レディ』のイライザなどは、日本人でこんなに似合う人がいたのかと、衝撃的といえる美しさで、みんなを驚かせました。

「そうですか。嬉しいです。みなさんに助けていただいたおかげです」

――宝塚の男役トップスターの方が、卒業後に男役から女性の役へと移行する際には、時に観る側がついていけない場合もあるかと思うのですが、大地さんはとにかく“圧倒”しました。卒業後の反響は正直、どう感じていましたか?

「最初にやらせていただいた『プリンセス・モリー』のモリーが、山で育った男の子みたいな子でした。そこから入っていって、次が野田秀樹さん演出の『十二夜』でお兄ちゃんと、男装する妹の双子の兄妹を一人二役で演じました。だから割とスムーズに移行していけたんです。その後マリリン・モンローが映画でやった『王子と踊り子』、『風と共に去りぬ』と続いて。そうした流れ的にも良かったのかなとは思います」

――演じる大地さんとしても宝塚の退団からスムーズに女優へと移れた感覚だったんですね。

「そうですね。その間、リサイタルやディナーショーなんかもやりながら、いわゆる女優としての役になっていきましたが、でも私自身は、“演じる”ということには、あまり変わりがないと思っています。その人がたまたま男なのか女なのか、何歳なのか、時代がいつなのかという違いはありますけれどね」

――大地さんは再演舞台も多いです。そのことに関してはどんな思いがありますか。

「再演はやっぱり嬉しいです。お客様に受け入れられているからこそですから。でも、“良くて当たり前”のラインからスタートしますからね。初演より厳しいとは思います。成功した作品の、それ以上にならなくてはいけない。なぞるだけではダメ。でも変えようとするのもまた違う」

――その作品が良かったからこそ、受け入れられたわけですし。

「そうです。それをよりよくするためにといって、何か小技を使おうとか、変に変えようといったことはあまり思わないです」

これだけ再演舞台が支持され続けるには、理由がある。

だいち・まお
 1956年2月5日生、兵庫県出身。1971年に宝塚音楽学校に入学し、73年に宝塚歌劇団に入団。82年に月組トップスターとなり、一時代を築いた。84年に退団。宝塚歌劇団100周年を記念した「宝塚歌劇の殿堂」設立当初からの100人に選ばれ殿堂入りを果たしている。退団後の主演舞台は『風と共に去りぬ』『マイ・フェア・レディ』『エニシング・ゴーズ』『ローマの休日』『夫婦漫才』『最高のオバハン中島ハルコ』など多数。文化庁芸術祭賞大賞、菊田一夫演劇賞特別賞、松尾芸能賞演劇優秀賞ほか受賞歴も多数。主な出演ドラマに『越路吹雪物語』『最高のオバハン中島ハルコ』『正直不動産』など。映画、CMでも幅広く活躍中。2025年は映画初主演となる『ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜』が公開。

『ゴッドマザー〜コシノアヤコの生涯〜』
監督・撮影:曽根剛
脚本:池田テツヒロ
出演:大地真央、黒谷友香、鈴木砂羽、水上京香、温水洋一、木村祐一、市川右團次
配給・製作:日活、東京テアトル