40年の時を経て今年の4月にはイランにも

――それだけ小林さんのおしんが国内外を問わずに感動的だったということです。

「ひとりの女性が、前向きに一生懸命頑張っていくことによって成功していくというサクセスストーリーなので、ドラマを見ることで非常に勇気づけられて希望が持てたそうです。それぞれの土地でしか伺えないようなお話もたくさん聞かせてもらいましたし、“日本が大好きになりました”とおっしゃる方も大勢いらっしゃいました」

――日本人の代名詞が“おしん”になっているようなときもあったと。

「ベトナムだったと思います。いわゆるハウスキーパーという言葉がもともとなくて、そうした家事労働者の方のことを“おしん”と呼ぶ国もあるそうです。“わたしのお母さんは<おしん>をしています”みたいに」

――名称にまで。いまも愛され続けている作品でもあります。

「実はこの4月にもイランに伺ったんです。日本のみならず、海外のみなさんにもまだ覚えていただいている作品に、自分が出演させてもらえたというのは、本当にありがたいことで、自分にとってやはり財産だなと思っています。私自身、ずっと大切にしていきたいと思っています」

 視聴者としても大きな作品を届けてもらったが、それほどの作品に出会えたのは本当にすごい。同時に、人々を惹きつけた小林さんの力も大きかったのは間違いない。

(つづく)

小林綾子(こばやし・あやこ)
東京都出身。5歳のころより芸能活動を開始し、1983年にNHK連続テレビ小説『おしん』の主人公の少女時代を演じて、一躍、国内のみならず、海外でも知られる存在となる。『おしん』は実に80以上の国と地域で放送されている。ほか主な出演作に大河ドラマ『いのち』、ドラマ『剣客商売』シリーズ、『渡る世間は鬼ばかり』、連続テレビ小説『なつぞら』、映画『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』など。最新出演舞台は向田邦子作、石井ふく子演出の『花嫁 〜娘からの花束〜』。同作には、2012年のドラマ版、2016年の舞台版に続き3度目の出演となる。

●作品情報
松竹創業百三十周年『花嫁 ~娘からの花束~』
作:向田邦子
演出:石井ふく子
出演:久本雅美、羽場裕一、小林綾子、丹羽貞仁、上脇結友、瀬戸摩純、石原舞子
製作:松竹株式会社
公式サイト: https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/mitsukoshi_2506/