5歳のころより芸能活動を続けてきた俳優・小林綾子さん。子役時代を演じたNHK連続テレビ小説『おしん』での熱演は、いまでも日本だけでなく海外でも心を揺さぶり続けている。舞台でも映像でも、その世界にリアリティを持たせ、いつの間にか観客を引き込んでしまう稀有な存在感を放ち続ける小林さん。そんな小林さんのTHE CHANGEとは――。【第1回/全4回】

小林綾子 撮影/有坂政晴

「私の人生で一番大きな変化をもたらしてくれたのは、やはり『おしん』との出会いだったと思います」。

 98歳にして敏腕をふるう石井ふく子さん演出の舞台『花嫁 ~娘からの花束~』に立つ小林さん。石井さんとの最初の出会いは小学5年生の5月だったそうだが、その直前に出ていたドラマが、1983年のNHK連続テレビ小説『おしん』だった。いわゆる“戦中と戦後の混乱期を逞しく生きた女性の一代記もの”で、小林さんは主人公・おしんの少女期を演じた。平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%と現在とは単純に比較できないが、それでも日本のテレビドラマ史上、もっとも高い視聴率を記録したドラマとして今も名を残す。

「私は1年間のドラマ放送のうち(『おしん』は1年間にわたって放送された)、たった6週間だけの出演でした。でも人生が大きく変わりました。当時は、演出家の方がおっしゃることを、ただ一生懸命に演じて、素直に自分の中で表現していました。それがどういうわけか日本のみならず世界中にまで羽ばたいて。橋田寿賀子先生の脚本のすばらしさゆえだと思います」

※橋田寿賀子・・・1925~2021年。脚本家、劇作家。『おしん』のほか、NHK大河ドラマ『おんな太閤記』『春日局』、ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(プロデュ―サー、石井ふく子)など、数々の名作を残した。5月開催の「第33回橋田賞授賞式&橋田壽賀子先生ご生誕100年パーティー」には小林綾子さんも出席。石井ふく子さんが「橋田壽賀子生誕100年記念特別賞」を受け取った。

――『おしん』は海外での評判、評価も非常に高い作品です。小林さんも、放送終了後の早い時期から、海外のイベントへ呼ばれていくことが多かったそうですね。

「6年生のときには中国に伺いました。胡耀邦総書記さんの時に日中青年友好交流が行われ、日本青年3000人が招待されたのです。現地では中国青年3000人と交流を深め、私もその一員として参加させていただきました。人民大会堂に6000人が一堂に会したんです」