ポケモン』の名前を聞くだけで、その特徴がわかる。『プリキュア』たちの名前には明らかに多く出現する音がある。『呪術廻戦』『鬼滅の刃』のキャラ名、『ドラクエ』の呪文にも法則が存在する。「にせたぬきじる」と「にせだぬきじる」の違いは小学生でも知っているーー。
 おもしろすぎる日本語を分析する言語学者・川原繁人の活躍は、まさに縦横無尽だ。『フリースタイルダンジョン』に出演し、慶應義塾大学で教壇に立つ彼の「THECHANGE」とはーー。

川原繁人 撮影/三浦龍児

言語学という学問が日本の大学から消えるんじゃないか

ーーラップもそうだし、ポケモン、プリキュアの名前、ドラクエの呪文や『呪術廻戦』『鬼滅の刃』のキャラクター分析、本当に興味深いものだらけです。
 研究が、よりマスに近いものというか、多くの人に関心を持ってもらいというお気持ちはあるのでしょうか。

「それはもうずっと持ってます。なんなら、私は言語学という学問が日本の大学から消えるんじゃないか、くらいに思ってて。日本では、言語学専攻がある大学のほうが珍しいんですよ。アメリカでは言語学部がしっかりあって、15人ぐらいの言語学者が集まって言語学の議論をやっているところが多いんですが。日本では言語学はまだまだマイナーな学問で、口を開けばその学問は何の役に立つんですか? って聞かれるんです。

 ぶっちゃけ、何かに役立てようって気持ちは二の次なんですよ。言語学は、ことばについて知りたいからやってるんですよね。「やりたい」「知りたい」「楽しい」っていう気持ちがないと、そもそも学問って成り立たないんです。けれども、世間は“それに私たちの税金を使うんですか?”、というしごく真っ当な疑問を投げかけてくるんですよ。

 でも、今の私は、正直、「はいそうです。知的好奇心のために投資してください」って言いたいと思っています。
 学問っていうのは好奇心に突き動かされてやっているものなのですが、それが回り回って役に立つんですよっていうのを、今すごく言いたくて。

 これはすごく大きな話になっちゃうんですけど、なんの役に立つんですか? っていう問いを考えるために、逆に役に立つ学問ってなんですか、と考えてみましょう。そうなると、工学系で新しい科学技術を発明するっていうのが真っ先にうかぶと思います。医学系もありますが。

 今、科学技術の進歩ってすごいじゃないですか。でもこの状況って、危険だと思うんですよね」