江戸時代、文化元年(1804年)に創業し、現在に至るまで酢のトップメーカーとしてあり続けてきたミツカン。酢以外にも「味ぽん」や「カンタン酢」、納豆の「金のつぶ」シリーズなどの大ヒット商品を開発し、近年では体験型博物館の「MIZKAN MUSEUM(ミム)」を運営している。2021年、そのミツカンの社長((株)Mizkan Holdingsの社長)に中埜裕子さんが就任した。今回はミツカン初の女性経営者として注目される中埜裕子さんと会社、それぞれの転機について、これまでとこれからについて聞いてみた。【第3回/全3回】

3歳のときに意識したミツカン
創業家に生まれて、初めて自分がミツカンを意識したのはいつでしたか?
「3歳ぐらいのとき、四国にある母の実家に泥棒が入ってしまい、警察の方が来て事情聴取をされたんです。私も興味があったのでそばにいたんですが、そのときに“おうちはなにしているの?”と警察の方に聞かれて、味ぽんを作っていますと言ったら、当時はまだ味ぽんが認知されていなくて通じなかったんです。それでお酢を作っていますって言い直したら、それは通じて。四国でもお酢メーカーとして知名度があったことに驚きました。これが家と仕事が結びついた、一番、最初のイメージです」
ご家族からはいろいろお話を聞かされましたか?
「3歳ぐらいまで祖父(七代目の中埜政一さん)と同居していて、祖父は体調面から食事制限されていた時期もあったんです。でも、用意されたもの以外を食べたくなると私を社長室に呼んで、幼稚園に持っていく私のお弁当を、ちょっとつまみ食いとかしていました。その社長室に、酢づくりの工程をミニチュアで再現したものがあったんです。それを見て、酢ってこうやって作るんだと思っていたのを覚えています。そういうところから、ちょっとずつ意識はしていきました」