「“いい歌詞を書くためならなんだってしてやるぜ”みたいな人もいるけど」
一方で、自身の感性を尊重して生きているアイナさんが、心がけていることがある。
「“普通の感覚”をちゃんと味わうこと、ですね。アーティストみたいなのをやっていると、わけわかんない! みたいな個性的な人が多いけど、そこに近づきすぎると"普通ではないこと”が正義みたいになってきちゃう。ヘンであることでいい歌詞が書ける、みたいな。たとえばアーティストの中には、“いい歌詞を書くためならなんだってしてやるぜ”みたいな人もいるけど、そこに行きすぎちゃうと感覚を失ってしまうから。だから、こういうインタビューでもそうですけど、自分と違う職業の人とちゃんと目を見て話して、その人の言葉をちゃんと聞く。そうするだけで戻れるというか、感覚が行きすぎないのかなと思います」
ーーバランス感覚を持つことが大切なんですね。
「そうですね。感性のバロメーターを保つことが、刺激に敏感でいられる秘訣な気がします。私自身すぐに周りに染まっちゃうので、なるべくバランスを意識しているんです」

ーーバランスを意識するようになったきっかけがあるのでしょうか。
「ソロになってからだと、曲を作っていると集中しすぎて2日くらいご飯を食べないんです。飼い犬のご飯だけはちゃんとあげて犬のテリトリーだけはキレイにして、自分のスペースはもう……換気扇の下とかゴミがヤバいんです。ヤバいなっていうのはわかっているんですけど、それを続けてしまう自分がいて」
ーーどんな状態になってるんですか……?
「キッチン台がウーバーイーツのゴミとかいろんなものであふれて……匂いがヤバい(笑)。ベーシストのなかむらしょーこちゃんが家に来ると、もうおぞましい顔をして(笑)。さすがにヤバいんじゃないかなと、それで気づきました。ちゃんと社会で生きている人にも触れないと、ダメだなって」
ーーそういう状態に陥ると、感性が鈍ってしまうと。
「逆によくないですよね。ご飯も味がしないし、ゴミを捨てるだけの日々というか。生きて体になにか入れて排便して、それだけしかできない、ただただ出し入れする容器、みたいな。よくないですね」
ーー社会性の大切さが身にしみました。
「逆に、企業に勤めている会社員の友達がいるんですが、かっこいいんです。朝早く起きてゴスロリの服を着て、休日になるとSMクラブに行くんです。特にSMが好きなわけじゃなくて、ショーを観ることが刺激としていいそうで。あと脱毛ワックスで鼻毛をバーンッ! て抜いたり。そんなに刺激ほしいんや!? 1週間前もやってたやん! みたいな(笑)。やっぱり人間ってバランスが大事なんやなあ」
率直に、しみじみと話すアイナさん。その口ぶりさえも、感性のきらめきが隠しきれていなかった 。
トップス¥15,840/NOT YOUR ROSE(ハナ コリア) パンツ¥12,870、ベルトバッグ¥8,140/ASURA(ハナ コリア) ブーツ¥86,900/GRAPE(合同会社九狐)
◎問い合わせ先:ハナ コリア support@hana-korea.com
合同会社九狐 info@9fox.ltd
あいな・じ・えんど
1994年12月27日生まれ、大阪府出身。歌手を志し上京後、2015年にBiSHのオーディションに応募し、同年3月よりメンバーとして活動。一貫して振り付けを担当した。グループ活動のかたわらソロアーティストとしてさまざまなアーティストとコラボし、ガールズグループメンバーの枠を超えて活躍。2022年にはブロードウェイ・ミュージカル『ジャニス』でジャニス・ジョップリン役に抜擢され、翌年には初出演にして初主演映画『キリエのうた』が公開される。2023年6月29日のBiSH解散後、ソロアーティストとして活動中。