「僕は生かされているんだなと、この1年ですごく感じましたね」

――というと。

「やっぱり毎日、体調が良いわけじゃありません。気持ちの面でも良いときもあれば、どうしても乗らないときもある。100%の状態で舞台を届けるためには、限界を超える必要がある。それには今までの自分のやり方だと通用しなくなってくるんだな、と。そんなとき、カンパニーのみんなとやっていると、誰かがポッと火をつけることで、そこに乗っかれたりするんです。“ひとりはみんなのために”という言い方をしますけど、本当にそうだなと。

 これまでの現場でもそう思っていましたが、1年という舞台で、それが理屈じゃないところで出てくる瞬間が何度もありました。ハリー・ポッターというすごくいい役をいただいて舞台上に出ていますが、表に出ていないスタッフさん含め、僕は生かされているんだなと、この1年ですごく感じましたね」

――3時間40分という長丁場の舞台です。

「Wキャストでハリー役を演じた平方元基さんともよく話すんですけど、脳がすごく疲れます。体の疲れももちろんですが、脳疲労が一番半端ない。特に続けてきてそうなってきました」

――続けてきて。

「最初のころは、いま1幕のこのシーンだから“あと3分の2か”とか、長さをカウントしている自分がいたところはあったんです。けれど次第に、“いまここのシーンでこういう空気が生まれたということは、後半ではこうやって構築していかないと、最後に繋がっていかないな”と考えている自分がいます。毎回、舞台の空気によって組み合わせを考えているので、ものすごく脳が疲れるんです」

吉沢悠 撮影/冨田望