「僕のハリーも6月いっぱいということで……」

――前向きな疲労ですね。ところでハリーを演じるにあたって、事前にイギリスに行かれたとか。

「はい。イギリスで、デビッドさん(David Ricardo-Pearce/2023年10月よりロンドン・ウエストエンドの公演にてハリーを演じている)のハリーを観劇しました。これは、これまでお話してこなかったんですが……僕のハリーも6月いっぱいということで、お話してしまいましょうか」

『呪いの子』の舞台では、職場の机の上が散らかっているとハーマイオニーに言われたハリーが、魔法でものを片付ける。吉沢さん演じるハリーは、ものが片付いたあと、机の上に足を乗せてハーマイオニーとの会話をする……という一連のシーンがある。

「まさに、あの机に靴を履いたままの足を乗せるという、あそこはデビッドさんのお芝居からいただいたんです。あれは日本人の僕の感覚だと生まれないんですよ」

――そうなんですね! もう一度観たくなります。ほかに、実際にイギリスに行ってみてよかったことや、感じたことはありましたか?

「僕はけっこういろんな国に行っているんですけど、好きな国ベスト3に入る国になりました。イギリスはそのときが初めてで、伝統も歴史もある国ですし、本当に優しい人たちが多かった印象です。あるとき、ベビーカーでお子さん連れの女性が歩いていて。階段まで来たときに、全然知らない若いお兄さんに、“ちょっと手伝ってくれない?”とその女性がお願いすると、そのお兄さんも“OK!”って感じですぐにベビーカーを運んであげていました。そういった場面を何度も見ました」

――“手伝って”と言う側も、話しかけやすい文化ということでしょうか。

「そうなんだと思います。かと思うと、今回のハリーたちの雰囲気にも、イギリス人たちの気質が出ています。特にハリーはそうなんですけど、本当は“愛してる”とか“ごめんね”とか伝えればいいことを、違うように伝えてしまう。そういう、登場人物たちのコミュニケーションの傾向に関しては、日本で稽古に入る最初のときに全キャストに向けて、事前の周知がありましたね」

――最後に、これからの自分に期待していることを教えてください。

「そうですね。この作品を1年やり切ったことで、自分のなかで海外の作品をやりたいという気持ちがどんどん出て来ています」

 それは嬉しい発言。今年の8月末に47歳になる吉沢さん。俳優としてどんどん魅力的になっている。

よしざわ・ひさし
1978年8月30日生まれ。東京都出身。1998年にドラマ『青の時代』で俳優デビュー。『動物のお医者さん』でドラマ初主演を務めた。近年の主な出演作品は、ドラマ『夫婦が壊れるとき』『週末旅の極意〜夫婦ってそんな簡単じゃないもの〜』『泥濘の食卓』『放課後カルテ』、映画『桜色の風が咲く』『ネムルバカ』、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』が放送中。2024年7月~2025年6月公演の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー・ポッターを演じる。

●作品情報
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
オリジナルストーリー:J.K.ローリング
脚本・オリジナルストーリー:ジャック・ソーン
演出・オリジナルストーリー:ジョン・ティファニー
主催:TBS、HORIPRO、ATG Entertainment