自分の中にあるものが、順番に降りてきているわけじゃない

 芸人、脚本家、漫画家、劇作家、多ジャンルでものをつくるクリエイターとして活動する彼の、創作論の一端だ。

「自分の中にあるものが、順番に降りてきているわけじゃないと思うんですよ。つまり、そのときその瞬間に降りてこなかったものは、永遠に降りてこない可能性がある。“自分の中にある発想なんだから、いずれは降りてくるだろう”って考える人もいるでしょうけど、どうもそうじゃない気がするんですよね。逆にいうと、自分の中にはもっといろんなものが埋まっていると思いたい。じゃなかったら、いつか尽きてしまうじゃないですか。そうではなくて、無限にあるものがその時々の組み合わせでたまたま降りてくると考えたら、そのチャンスを逃さないようになるべくパソコンを開いて向かい合う時間を多く持たないと、と今でも思ってます」

 いってみれば、人生が変わるような物事を思いつく瞬間はいつやってくるかわからない。だからこそ常にそれを受け取る姿勢を作り続けなければいけない。それが岩崎の言う「打席に立つ」の意味なのだろう。

 最後に彼に、「天才とはどんな人だと思いますか?」と質問した。「難しいですよね」と、ゆうに1分以上長考したあと「あんまりいい表現じゃないかもしれないですが」と前置きして、こう答えた。

「それにふさわしい努力をしていないのに、大きな成果を出してる人。つまりバグですよね。普通はありえないこと。だから若いうちに何かのジャンルで結果を出す人は“天才”って言われるんだと思います」

 では、自身が他称されている「鬼才」はどうかと尋ねると、これまた「そうだなぁ…」と長い沈黙を挟んで「世の中に望まれてない天才、ですかね」と少し笑ってみせた。

岩崎う大(いわさき・うだい)
​1978年9月18日生まれ。東京都出身。幼少期を湘南で過ごしたあと、西東京市で暮らす。中学3年生から高校までオーストラリアへ移住。高校卒業後、帰国子女として早稲田大学政治経済学部政治学科入学。大学でお笑いサークル「WAGE」に参加、在学中の2001年にプロデビュー。2005年までWAGEとして活動したあと、2006年に槙尾ユウスケと「劇団イワサキマキヲ」を結成。2010年にコンビ名を「かもめんたる」に改名。その後『キングオブコント2013』で優勝。2015年には「劇団かもめんたる」を旗揚げ。2020年と2021年に2年連続で岸田國士戯曲賞に最終ノミネート。現在も芸人、劇作家、脚本家、演出家、漫画家など、多岐にわたり活動中。

■インフォメーション
『かもめんたる岩崎う大のお笑いクロニクル 難しすぎる世界が僕を鬼才と呼ぶ』
著:岩崎う大/発行:扶桑社
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