“ヘルムート・ニュートンとだったらやります”って

「仕事で返すってどうしようかな、と思ったときに、どうせやるんだったら、世界一を目指そうと思ったわけです。世界一なことをやってやるぞ、と。それでそのときに私が世界一だと思ったのがヘルムート・ニュートンだったんです」

 ヘルムート・ニュートンはドイツ出身の写真家。1950年代から挑発的な作風で話題となり、世界的な評価を得ていた。

「ヘルムート・ニュートンは世界一。この人と仕事する、と思ったんですよね。その頃、写真集の話はけっこう来ていて、有名な日本の写真家の方とか、このカメラマンで出しませんか?みたいのは来てたんです。“こいつやるだろうな”っていうのはみんなに広まってたんでしょうね(笑)。だから、いろんな出版社からもどんどんきてたんですけど、私は“ヘルムート・ニュートンとだったらやります”って返してました。まぁ、鼻で笑われたり、“お前ごときが”、っていうリアクションですよね。
 でも諦めなかったんです。そうしたら、写真集とは全く関係のない人が、“それ面白いですね”って言って、自分でフランス語の通訳を雇って、有給休暇を取ってヘルムート・ニュートンに会いに行ってくれたんです。それで話を取り付けてくれたの。ヘルムート・ニュートンのほうも私の映画を1本観てくれたらしいんですけど、それを観て“いいよ”って。それで決まったんですよね」