ヘルムート・ニュートン撮影の写真集『罪』が大ヒット

 1993年に発売された『罪』というヘルムート・ニュートンが撮影した石田さんの写真集は大ヒット。まさに「CHANGE」の瞬間となった。

「私すごく思ったんですよ。強く強く思えば、地球の裏側に届くんだって。さらにビックリしたのは、実際に撮ってくれることが決まって、契約書が届くじゃないですか。もちろんヘルムート・ニュートンのサインがしてあったんですね。その契約書の日付がヘルムート・ニュートンの誕生日である10月30日だったんです。それで、私のところに届いたのが11月9日。私の誕生日!これすごいでしょ。そもそも最初に起きたひどいことは起きてほしくなかったし、起こるのはよくないこと。お金のために人の人生壊すのか、と思いましたから。でも、誕生日にその契約書が来たときに、良いことも悪いことも含めて人生の出来事って決まってるのかな、って。捨てたもんじゃないなって思いました」

 写真集「罪」は後世にも残る作品となる。

「1回、関西で舞台をやったとき、出演者30人近くの俳優さんのうち、3人ぐらいが『罪』を持ってたよ、って。すごい確率だなと思って(笑)。
 でもね、私も命がけっていうか。これやらないと道歩けないと思ってたから、だから、そういう気持ちが仕事に、その作品に出てくるものなんだろうな、って思いますね」

 窮地に追い詰められたときに、妥協せずに「世界一の写真家」と仕事をする、と言い切った石田さんの強さは、今も作品作りに引き継がれている。

「信じきって、やれると思って作りましたし。今回もそういう意味では面白いものができたと思ってます。それぞれの方がそれぞれの自由な捉え方で観てもらえたらいいなと思いますね」

石田えり(いしだ・えり)
熊本県出身。『遠雷』(80年/根岸吉太郎)で日本アカデミー賞優秀主演賞と優秀新人賞を受賞。「第41回カンヌ映画祭」コンペティション部門出品の『嵐が丘』(88年/吉田喜重)、「第64回ヴェネチア映画祭」オープニング作品『サッド ヴァケイション』(07年/青山真治)などに出演。ヘルムート・ニュートンが撮影した写真集「罪ーimmoraleー」(93年)も大きな話題を呼んだ。19年に短編映画『CONTROL』を初監督。『G.I.ジョー・漆黒のスネークアイズ』(21年/ロベルト・シュヴェンケ監督)でハリウッドデビュー。

●作品情報
『私の見た世界』
監督・脚本・編集:石田えり
主演:石田えり、佐野史郎、大島蓉子ほか
公式サイト:https://watashinomitasekai.com/
製作/配給:トライアングルCプロジェクト
(c)2025 Triangle C Project