気づいたら、「違いが分かる男」として、CMでコーヒーを飲んでいました
その後、20代の頃は、六本木で深夜までアルバイトをして、そこで貯めたお金で毎年ニューヨークに行って、あらゆる舞台を一番安いチケットで買って観ることを繰り返します。「いつか絶対にミュージカルの演出家になってやるぞ」って強い思いだけは持っていましたね。ただ、現実は厳しく、なかなか糸口が見えない。そこで29歳の頃に、「これが最後だ」と決意を固めて、借金をして演出家として上演したのが、『アイ・ガット・マーマン』です。これが結果的に話題になって、大劇場の仕事もいただけるようになり……気づいたら、「違いが分かる男」として、CMでコーヒーを飲んでいました (笑) 。
その後はさまざまな舞台に携わってきましたが、最新の仕事は、映画です。
昨年のお正月に発生した能登半島地震の後、なかなか復興が進まない様子をメディアで見て、僕もボランティアに参加したいと思ったんです。現地で、地震で生まれたゴミを片付けていたら、ある方から、「亞門さんは、そんなことはしなくていい」と怒られたんですよ。「あなたは有名人なんだから、この状況を伝えてほしい」って。僕のできることはなんなのか。考えた結果、ショートフィルム『生きがい IKIGAI』を作りました。
主演は絶対に地元の石川県出身の人がいいと思って、鹿賀丈史さんにお願いしました。鹿賀さんは、「やる!」と、即答してくれました。そのときはまだ何も決まってない状態でしたが、鹿賀さんは「やらなきゃダメだ!」って、背中を押してくれたんです。
この作品は多くの方の熱い思いで撮ることができたと思っています。
宮本 亞門(みやもと あもん)
1958年、東京生まれ。演出家として、ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎などジャンルを問わず幅広く作品を手掛ける。2004年に東洋人初の演出家としてオンブロードウェイにて『太平洋序曲』を上演。トニー賞4部門にノミネートされた。
北陸能登復興支援映画
『生きがい IKIGAI』
企画・脚本・監督:宮本亞門
主演:鹿賀丈史(石川県出身)
出演:常盤貴子、根岸季衣、小林虎之介、津田寛治
地震による甚大な被害から8か月半後に、豪雨に見舞われた石川県の能登地方。現地でのボランティア活動に参加し、想像を超える被害と復興の遅れを目の当たりにした宮本が、地元の人々の声を聞き、言葉に触れて作られた一本だ。同時上映・ドキュメンタリー
『能登の声The Voice of Noto』
石川県での先行公開に続き、7月11日(金)よりシネスイッチ銀座 他順次公開(配給:スールキートス)
公式サイト: https://ikigai-movie.com/index.html