そういうものなのかなって思っちゃった

――ただ、当時の写真からは、すごく明るい雰囲気が伝わってきます。

「だって、暗い顔したらダメじゃないですか(笑)。もう開き直っていましたからね。最初、篠山さんの事務所に連れて行かれたときは、裸になると分かっていなかったんです。ただ、あの頃の篠山さんは山口百恵さんを筆頭に、アイドルをたくさん撮っていらっしゃった。だから、篠山さんに撮ってもらうこと自体が憧れでした」

――巨匠ですもんね。

「だから、“ちょっと脱いで”って言われると、“え~っ!?”って驚きながらも、そういうものなのかなって思っちゃったんですよ。映画『遠雷』(81年)のときも、そうでしたもん」

――地方でトマト栽培に勤しむ青年の話ですが、同作での石田さんの大胆なヌードと濡れ場は、今でも語り草となっていますね。

「台本には脱ぐって書いてあったけど、二十歳そこそこの女の子に絶対、そんなことはさせないだろうと思って現場に行くんです。ところが、行ったら“はい、脱いで”って、監督から当たり前のように言われる。周りのスタッフも当然でしょという雰囲気だし」

――ひどい! 裸になるって知らなかったのは、石田さんだけだったんですか。

「そう。ただ、スタッフは日活ロマンポルノの人たちでしたから、女性の裸には慣れているんですよ。私の腰元で音を拾っていた録音技師の人は仕事に必死で、私の裸なんか見ていない。仕事しているんだって思ったら、私も羞恥心がなくなりましたね」

(つづく)

石田えり(いしだ・えり)
1960年11月9日、熊本県生まれ。A型。T162。映画『遠雷』(80年)で日本アカデミー優秀主演賞と優秀新人賞を、『華の乱』(88年)や『飛ぶ夢をしばらく見ない』(90年)などで日本アカデミー賞最優秀助演賞などを受賞。2019年には短編映画『CONTROL』で初監督を務めた。