それまで積み重ねてきた何もかもを打ち砕かれるような経験が、上白石を大きく変えた
──綾瀬さんとは血のつながっていない母娘の役で、ともに精神的に成長していくドラマでした。
「撮影初日に、綾瀬さんの亜希子に“お義母さん、頑張って”と言うシーンがあったんですが、平川雄一朗監督から全然OKが出なくて、30回くらいリテイクしました。そのときはもう、悔しさでいっぱいで。でも私ができるようになるまで諦めないでくれていたのが、厳しかったけれどありがたい経験でした」

──その厳しい現場を経験して、俳優業への向き合い方も変わったのでしょうか。
「本気になれました。厳しかった分“やっぱりお芝居が好きなんだな”って実感できたのが、大きかったです。当時はまだ10代だったので、学業を優先させてもらっていたこともあり“これから自分はどうなっていくんだろう?”と、将来への具体的な考えが抱けていなかったんです。
でもこの作品で壁にぶち当たって、本気で悔しいと思えたし、お芝居の殻を破れた感触もありました。それまでの人生でいちばんもがいた経験だったので、苦しんだからこそ表現の道にしがみついていきたい! と決意できたんです」