「俺は最後の弟子だと思ってるから」師・松方弘樹への特別な思い

 ギラギラとしたバイタリティが小沢仁志の核にある。

「たださ、あの先輩たち、そのまた上の白黒時代の先輩方はもっとヤバいから(笑)。だって松方(弘樹)さんのお父さん(俳優の近衛十四郎さん)だったら、ロケやってて、“あの山の中、住民が貸してくれないからロケできないんだよね”って聞いたら、“監督、待ってろ。明日できるようにしてやるから”って言って、翌日になったら“ロケ出来るぞ”って。“え? なんで出来るようになったんですか?”って聞いたら、“あの山、俺買ったから”って(笑)。スケールが違うんだよな。そりゃとんでもない世界だよ」

 数多くの偉大な先輩との仕事を振り返るなかでも、松方弘樹さんとのエピソードを語る小沢さんは一層その尊敬と憧れがあふれている。

「俺は最後の弟子だと思ってるから。ものすごい役者だけど、それでいて、偉そうぶらないし、すごい謙虚。松方さんには何から何まで本当に感謝してる。やっぱり、この仕事をやってて思うのは、憧れられるってのが最大のことだと思うんだよな。芝居がうまいね、なんていうのは役者である以上、必然。そこじゃなくて、憧れられるようになれ、って。簡単じゃないけどさ、若いやつにそれは言いたくなるんだよな」

小沢仁志 撮影/有坂政晴

1962年6月19日生まれ、東京都出身。1983年にテレビドラマ『太陽にほえろ!』で俳優デビュー。翌年、ドラマ『スクール☆ウォーズ』で注目を集める。80年代から90年代にかけては『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズで人気を博し、Vシネマ黎明期を代表する存在として圧倒的な存在感を示す。また、俳優業にとどまらず、監督・脚本・プロデューサーとしても活動。1995年には映画『SCORE』で監督デビューを果たし、以降も、俳優としてだけでなく、監督や脚本、企画・製作などさまざまな立場から作品制作に携わっている。強面のキャラクターとは裏腹に、近年はバラエティ番組や自身のYouTube『役者魂チャンネル』などを通じて、親しみやすい一面も注目されている。俳優歴40年を超えた現在も、映画・ドラマ・舞台などジャンルを問わず、幅広く活躍を続けている。

作品情報)
『波乱を愛す』
著者名:小沢仁志
刊行日:2025年7月30日(水)
税込定価:1,960円(本体1,800円+税)
発行:株式会社KADOKAWA