「厳しい社会の中で耐えられるように」ひとりの母親としての思い

 育児をする母親、こと都会生活者は孤独に陥ることがあると聞く。何気ない誰かの一言が、ときに大きな救いになることがあるのだと、ヤイコはライフストーリーを通じて気づかせてくれた気がした。

 いまでは、娘さんも成長し、映画『クレヨンしんちゃん』を一緒に劇場に見に行くこともあるというほど仲がいい。

「音楽で生きていくという夢と、幼いころからの夢である母になること、どちらもかなえられてすごく幸運だと感じます。世間には、いろいろな子育て論がありますよね。実際に子育てしてみて思うのは、生まれてきたばかりの赤ちゃんのころは、まるで私の一部みたいな感覚でした。それが、保育園や幼稚園に入ったり、学校に通い始めて、別の社会の一員になった時点で、どんどんと個人としての人間性が形成されていくんですよね。私に似ているけど、違いが出てくるんです。
 この先、彼女がどんな選択をするか分かりませんが、どんな職業になってほしいとか、テストで何点取りなさいみたいなことは言ったことがなくて。それよりも、私のもとから自立して巣立っていったあと、厳しい社会の中で耐えられるように、好きなことをずっと好きと思える力とか、諦めない気持ちとかを伝えるようにしています」