今作では狂言作者・真狩天外役と藤川采女の一人二役
──賀茂利風は安倍晴明のライバルの陰陽師で、九尾の狐(きつね)に乗っ取られたりと、こちらも二役に近い役でした。
「賀茂利風としては、もともとの取りつかれる前のバージョン、狐(きつね)に取り憑かれているけど隠しているバージョン、取りつかれているのが表に出てきたバージョン……と、4役か5役もやっているような舞台でした(笑)。それに比べれば、今回はシンプルかもしれません。衣装も違いますし、難しく考えすぎずに、まずは視覚的な違いをはっきりさせることが大事だと思っています」
──そして真狩天外は狂言作者ですが、何か共感する部分はありますか?
「脚本を読んでいると『座付き作家の意地だ』というセリフがあるんですが、中島さん自身の思いも込められているように感じます。中島さんも45年間、面白い脚本を作るだけでなく、プライドや意地、そして“自分はこういう思いでやってきたんだ”という、熱いメッセージが詰まっている。この舞台ではそれを、踊りや歌、お笑いというエンターテインメントで、少し照れ隠ししながら表現している、そんな印象を受けました」