“濃密な人間ドラマ”脚本を手掛けたのは又吉直樹

──おひとりで二役演じられることに、いまどんな抱負をお持ちでしょうか?

「難易度は高いです。しかも、10代から年齢を重ねていく様を、私ひとりで演じます。お芝居の冒頭と、時代を経てのシーンでは、さらにそれぞれの生き方も変わっていますから、人生のディテールをていねいに。長い時代を描く作品でもあるので、丁寧に演じたいと思います」

──脚本は又吉直樹さんですが、ストーリーへの期待は?

「たくさんの登場人物が織りなす会話が本当に面白く、クロニクル(年代記)のように、昭和20年代から40年代まで、濃密な人間ドラマが描かれていると感じました。私が演じる二人の妻との交流だけでなく、エノケンさんには息子や友人を亡くした悲しみといった苦難がやってきます。
 それを彼がどう乗り越えていくかや、仲間との心の交流が、とても丁寧(ていねい)に描かれています。エノケンさんをご存じない方にも、彼がどのような時代に、どのように生きていた人なのか、体感していただける作品だと思います」