「思い出として胸に秘めたまま、未来に生きるって実はとても精神的に労力が要ることだなと」

――そこから得られた、蛇沼らしさとはどんな印象でしたか。

「人生において何を捨てて、何を選ぶか。この葛藤が、一番蛇沼らしい感情だったと思います。映画での彼は亡くなったお母さんを蘇らせたいという気持ちがあって、それは過去への執着として彼の行動に現れます。過去に生きるのか、未来に時代をつなげていくのかが、蛇沼も含めて登場人物たちの思いを読み解くヒントになりました」

――竜星さんも、「蛇沼という役に悩みながら、もがき苦しんで演じた」と以前コメントされていました。どんな点で特に悩まれましたか?

「過去の思い出にどう向き合うか、ですね。蛇沼が持つ過去にしがみつきたくなる気持ちって、人間誰しもが持っていると思います。その意味では僕自身も蛇沼に共感しましたし、思い出として胸に秘めたまま、未来に生きるって実はとても精神的に労力が要ることだなと実感しました。蛇沼が過去と未来のどちらを選ぶのか、その選択に説得力のあるお芝居になるように、僕の過去への思いにもオーバーラップしましたね」