聴き返すと、本当にいい曲ばかり
「デビュー当時のアルバムを聴き返すと、本当にいい曲ばかりだと感じます。スタッフの皆さんが力を入れて作ってくださった曲で、アレンジもメロディーも素晴らしいものばかりです。当時コンサートで歌っていたものをまた歌いたいなと思って歌い直すと、改めて良さに気付くんですよ」
そして、歌謡界のレジェンド筒美京平さんが手がけた名曲も伊代さんの楽曲群には並ぶ。筒美さんは生前、「素晴らしい声だ」と伊代さんの声を絶賛されたという。
「自分の声はずっとコンプレックスだったんです。“声が魅力的だ”と先生に言っていただいて、そのお言葉に救われたというのはあります」

「THE CHANGE」では、作詞家の湯川れい子さんにご登場いただいたが、その時『センチメンタル・ジャーニー』のお話になった。筒美京平さんから、“この子の曲を作りたいんだけど、デビュー曲どうしよう”と湯川さんに声がかかったという。“この子の声が魅力的なんだよ。なんとか成功させたい”と言っていたという。湯川さんからうかがったこのお話を伝えると、「その話は知らなかったです。ありがたいです」と伊代さん。
そして、積み重ねてきた楽曲は、尾崎亜美さん、林哲司さんなど、時を超えて、シティポップの名曲として、今も若い世代に愛されている。
「本当に財産ですよね。いろんな方に素敵な曲を作っていただいたおかげで、Spotifyなどでも、シティポップの中で、林哲司さんだったり、ピチカートファイブの小西(康陽)さんだったりに作っていただいた曲が上位に入っていたりするんです。当時、アルバムはスタッフの方々が本当に力を入れて作ってくださったんです。それで徐々に“松本伊代のアルバム、いいね”と言われるようになってきて、評価されたんです。今もすごく感謝しています」
80年代アイドルの楽曲はシングル中心。アルバムには重きを置かれない傾向もあったが、伊代さんのスタッフはアルバム重視のスタンスは崩さなかったという。