いまもなお、兒玉の記憶に残る“あの日の記憶”

 決定的だったのは、16年の大みそかにNHK紅白歌合戦の番組企画として行われた『AKB48夢の紅白選抜』。事前に「自分が16位以内に入っていると思う人は、さりげなくステージ中央に移動するように」と指示があり、本番では16位から順に選ばれたメンバーの名前がモニターに映し出された。

「前回が9位だったので入っていればいいな、と思っていましたが、全然呼ばれないんですね。当時はすでに睡眠不足の症状と、自分がどこで何をしているのかがだんだんわからなくなっていて、あと2人というとき、焦ってわたしはステージの真ん中に駆け寄ってしまいました」

兒玉遥 撮影/有坂政晴

 最後まで、兒玉遥という名前は映し出されず、その直後からネットにあふれたのは『勘違い兒玉遥』『恥ずかしすぎる』『自意識過剰女』という中傷コメントだった。

「いまだったら、“話題になった”とポジティブに考えられるかもしれないけど、まだ20歳だったし、自覚はなかったけど、うつ病の症状がかなり進んでいて、相当なダメージを受けました」

 2か月後、母親に付き添われて受診した心療内科で告げられた病名は「双極性障害」。うつ病だった。

「休養することにしましたが、このときはまだ、ちょっと疲れているだけだと思っていた……思おうとしていました」