『私を抱いてそしてキスして~エイズ患者と過した一年の壮絶記録~』(文藝春秋)で、第22回 大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、『極道の妻たち(R)』『バブルと寝た女たち』などの作品が映像化されている作家・家田荘子。作家活動以外にも僧侶としても活動する彼女のTHE CHANGEとはーー。【第1回/全2回】

家田荘子 撮影/柳敏彦

 私、とにかく女優になりたかったんです。

 高校の頃は、地元・愛知のローカル番組でアシスタントをしていました。日芸(日本大学芸術学部)に入って上京してからは、マクドナルドでバイトして、夜は六本木のディスコへ踊りに行く日々を送りながら、いろいろなところに自分で営業をかけていました。

 おかげで、端役ですけど、田中美佐子さんの友達役で『ダイアモンドは傷つかない』という映画に出演することができました。その映画の宣伝と、自分の売り込みのために出版社に行くと、「最近は何がはやっているの?」と聞かれたんです。

 六本木に通っていましたから、少女売春とか、大学生の麻薬とか、自分で見聞きしたことを話したら、「それを書いてごらん」って言われて、そこから私の作家としての活動が始まりました。500字ぐらいの記事のために、毎日のように繁華街に行って、ネタを拾っていました。

 そんなある日、山口組と一和会の間で「山一抗争」が勃発しました。

 スポーツ紙の一面に、「ピストルの弾がヤクザの幹部宅に撃ち込まれた」という見出しが書かれているのを見て、私の頭の中に、銃弾が飛んできて、お母さんが子供を抱きしめているシーンが勝手に浮かんできたんです。闘う男たちの後ろにいる女性は、朝、見送った夫が、次は棺桶で帰ってくるかもしれないーー。

 そこで、週刊文春の編集部に、ヤクザの妻たちの取材をする企画を提案したんです。すると、編集長は、「ピストルの弾は飛んでくるし、取材している事務所にダンプが突っ込んでくることもあるし、火炎瓶も飛んでくるだろうし、命も危ない」と穏やかに脅しながら、「何かツテはあるの」って聞いてきました。

 ここで、「ないです」と本当のことを言うと、他の人に企画を回されてしまうので、「はい、あります」と答えました (笑) 。