素直に感じ取れることを大事に「恥ずかしがらずに、飛び込んでみる」
ただ、こうした出会いが井浦さんに訪れるのは、自身が、新しい出会いや、新しいものへの受け入れ態勢が柔軟で、受け止める姿勢を持っているからではないですか? とうかがうと、「そういうところはあるのかもしれないです」と井浦さん。
「得意なものがある、好きなものがあるっていうのは本当にラッキーで素晴らしいことじゃないですか。それによって自信も持てる。でも、一方で、何もない自分というのも知っていて、それは自分にとっての一つの挫折でもあって、コンプレックスでもあったんです。何もないからこそ、求める力というのが付いたというのはあるかもしれないです。何もない自分だから、受け入れようという姿勢になるというか。
僕自身、何かを成しえたなんて思えたことはないですし、そんなことは簡単じゃないとは思うんですが“そのきっかけに気付けるようにはしていたいな”と、いつも思っています。
自分が“好き”と思えるものは、自分が気付けていなかっただけで、実は身近にあったりするんですよね。そういう足元に転がっている機会みたいなもの、目の前に突然訪れた機会にちゃんと感じられるような人間でいたいなと思うんです。だから、その受け入れ態勢という意味でいえば、1回ちゃんと取り入れてみたい、試してみたいという思いは常にあるかもしれないです。そこで出合ったものを大切にして、またそこから何かが始まって、時間をかけて、熟し、熟練していくまで積み重ねていく。そうするとまた出会いがあって……というような。
だからそこを恥ずかしがらずに、飛び込んでみる。素直に感じ取れることを大事にしたいという……そんな感じです」
いうら・あらた
1974年東京都生まれ。1998年、映画「ワンダフルライフ」に初主演。以降、映画を中⼼にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。最近の出演作品は大河ドラマ『光る君へ』(NHK)、『最愛』(TBS)、『無能の鷹』(テレビ朝日)、『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS)、映画『ラストマイル』(2024)、『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(2025)などがある。アパレルブランド〈ELNEST CREATIVE ACTIVITY〉ディレクター。サステナブル・コスメブランド〈Kruhi〉のファウンダー。映画館を応援する「MINI THEATER PARK」と、活動は多岐にわたる。
【作品情報】
タイトル:『街とその不確かな壁』
著 者:村上春樹
ナレーター:井浦新
配信日:2025年10月21日(上巻)