自死も考えたが実行できず、その後は予想外の展開
右を見ると、いくつもの管がジュニアさんに繋がっている大きな機器が目に入った。
「それで“これ、蹴り倒したら死ねるかな。芸人人生も終わったなら、もうええか。蹴ったろ”と思って足を上げようとしました。けれど全く動かない。右足が折れてたんです。これがもし機器が左側にあったら、蹴っていたと思います」
その後、ジュニアさんはICUから一般病棟へ。直後から、ジュニアさんがまったく想像していなかったという出来事が起き始める。
「移ったその日に、ガラガラっと病室の扉が開いて、15歳のときからお世話になってきた板尾(創路)さんが、“早く戻ってこいよ”と雑誌をバッと置いて帰りはったんです。“え、オレ、戻られへんねんけど”と思っていたんですが・・・」
そこから、次から次へとひっきりなしに芸人が顔を見せた。
「そのときは当然、歯も全部折れているし、ご飯なんて食べられない状態なんですけど、東野(幸治)さんがやってきて、『美味しんぼ』をずらっと置いていきました。全巻揃っているような感じで」
――揃っている“ような”感じで?
「たぶん“ここから、ここまで!”みたいに買ってきたんでしょう。1巻2巻、2巻、4巻みたいになってました(笑)。今田(耕司)さんもボケでバイク雑誌を持ってきてくれはったり、本当にいろんな人がひっきりなしに来てくれました。あるときは、車いすに乗れるようになってきていたころ、トイレに行ったら、(月亭)方正さんがトイレで悪魔の衣装に着替えているところでした」
――(苦笑)。
「わざわざテレビ局の衣装さんから借りてきたんですよ。“迎えに来た”とか言いながら、その恰好で入ってきたかったんでしょうけど、着替えてる方正さんを見てもうて“何してんねん”と」
――あはは。
「ほかにも毎日後輩とかが来て、ただバカ話して帰っていくんです。自分はしゃべれない状態だったので、話を聞いているだけでしたけど、“この前、あいつがこんなことして”とか、“昨日、あいつがあんなことを”とか」
――みなさん「頑張れ」とかそういったことを言っていくのではなく。
「そういうんじゃなかったですね」
――みなさんの大きな支えがあったんですね。
「あれがもし一般病棟に移って、誰も芸人が来なくてという日々が続いていたら、フェイドアウトしていたと思います。実際、東野さんは“あ、こいつ辞めるな”と思ったみたいですから」