『卒業』でアカデミー賞を獲得した世界的スターたちとの出会い「ふつふつと勇気がわいてきた」

 心細さにひとり震えていた24歳の青年に、そのひと言はどれほど嬉しかったことか……。

「その言葉にしがみつくような気持ちで、僕は渡米したんですが、当時の経験はいまもかけがえのない大きな宝物ですね。たとえば、映画『奇跡の人』や『卒業』でアカデミー賞などを獲得したアン・バンクロフトさんのご自宅におじゃまして、一緒にごはんをいただいたり、ほかにも著名な映画監督やプロデュサーなどに、たくさん会わせていただいたんです。
 そうそう、ニューヨークの街中をアッカーマンさんが歩いていたら、買い物帰りのリチャード・ギアさんとばったり遭遇したんです。ギアさんは、アッカーマンさんが手がけた舞台『BENT』で大成功を収めたことがあり、それ以来の親友なんだそうです。でも、お互い多忙のため、何年も会っていなかったんですよ。けど、その日は久しぶりに会うなり、“今夜は時間ある? 一緒に夕飯を食べよう”って、すぐに打ち解けて。その食事に僕も連れて行っていただき、3人で食事をしました。夢みたいでしたね」

 こうした出会いのひとつひとつが、高橋さんを“”再生”させていったようだ。

「こうした出来事の一つひとつが衝撃でした。正直言って、かなりブロークンハートな状況で日本を出てきたけど、日本から来た無名の若者に対して、誰もが分け隔てなく優しく迎えてくださったんです。また、多くの方が『KAZUYA』って、ファーストネームで親しみを込めて呼んでくれ、いろいろな話をしてくれました。世界的スターも、僕と何ら変わらない日常を過ごしているひとりの人間なんだと分かって、ふつふつと勇気がわいてきたんです」