監督と相談して決めた、山田さん演じる類家の行動

 それに類家は、心のどこかで“助けられなかった人たちはもう仕方ない”と割り切っているようなところがあるんじゃないかと思うんです。もちろん助けられなかったことを悔やんでいるだろうし、悔しいからあれだけ激高するわけなのですが、できなかったことは一回切り替えつつ 、やっぱりモヤモヤしたものもある 。そんな時にタゴサクから“まだ爆弾ありますよ”、“次のお相手は誰ですか?”と言われたので、彼の中のスイッチが入り“もう一戦できる。じゃあ、俺がそれを解こう”と いう笑いですね」

――今のお話を聞いて、あの時の類家の笑みが腑に落ちました。そういえば、類家はタゴサクと対峙する場面では、ずっと真正面に座ったまま会話をしていましたね。

「タゴサクと真っ向から対峙するシーンの時に、永井聡監督から“ここでは立って、タゴサクの周りをぐるぐる歩きながらしゃべってほしい”と言われたんです。でも僕は、原作を読んでいても、類家は動き回るような感じのタイプではないと思ったので、自分の意見を伝えました。

 ただ、類家とタゴサクのシーンはほぼ取調室内だったので、ずっと座りっぱなしだと一回戦目の清宮(演/渡部篤郎)の時と同じなので、画の代わり映えがしないんですよ。そういう部分も考えながら、みなさんと相談し合ってワンシーンごとにこだわりを持ちたかったんです」

 筆者が本作を見てまず思ったのは、演者全員による「役者同士の演技合戦」を見させてもらっているなということだった。特に、山田さん演じる類家と佐藤二朗さん演じるタゴサクとの知能戦は、互いにそのキャラクターを相当自分自身に落とし込んでいないと「見入るもの」にできなかっただろう。次回は、「この3作を見てから僕のことを語ってほしい」という今年公開の主演作について聞いた。

取材・文/根津香菜子

やまだ・ゆうき
1990年9月18日、愛知県生まれ。2010年にD-BOYSスペシャルユニットオーディションのD-BOYS部門でグランプリを受賞。特撮ドラマ「海賊戦隊ゴーカイジャー」(11 ~12 )のゴーカイブルー/ジョー・ギブケン役で俳優デビュー。近年の主な出演作に映画「HiGH&LOW」シリーズ(16 ~17)、「キングダム 大将軍の帰還」(24)、23度NHK大河ドラマどうする家康」などがあるほか、25年は「木の上の軍隊」、「ベートーヴェン捏造」と主演作が続く。ラジオ『山田裕貴のオールナイトニッポン 』が現在放送中。

■「爆弾」(https://wwws.warnerbros.co.jp/bakudan-movie/
監督:永井聡、脚本:八津弘幸・山浦雅大、原作:呉勝浩「爆弾」、出演:山田裕貴、
伊藤沙莉染谷将太坂東龍汰寛一郎、片岡千之助、中田青渚、加藤雅也、正名僕蔵、
夏川結衣、渡部篤郎、佐藤二朗ら出演。
10月31日(金)より全国公開。