局アナ、ニュースキャスター、ジャーナリストの違い

「49歳のときから始めて12年やらせてもらって、腹くくりと意気地が芽生えました。それまでくくれていなかった腹を、くくらざるを得なかった。久米(宏)さんの『ニュースステーション』の頃とは違ってネットも始まりかけていましたし、テレビメディアでいろいろな事件がありました。たとえばTBSが放送前の坂本弁護士へのインタビュービデオを教団側へと見せたことで、坂本一家殺害事件へとつながったり、種類は違いますけど、椿事件(テレビ朝日による政治的な偏向報道)というのもありました」

――いわゆる偏向報道ですね。

「テレ朝の報道局長の椿貞良氏が、民放の報道局長の集まりのときに、“『ニュースステーション』が頑張って自民党を下野させた”と言ったんです。これは中立公正を旨とする放送法第4条第1項にも第3項にもかかってくること。免許の召し上げになるかもくらいの大問題です。そういうことを経て、メディアもこれは言えない、あれは言えないと、コードがすごく厳しくなりました。腹をくくらざるをえなかった」

――コードが厳しくなったからこそ腹をくくる。

「無難なことをやってニュースを読んだり、“さあ続いては”とやっているのなら局アナでやればいい。こちらはギャラをもらって外からニュースキャスターとして来ているわけですから。言うべきことを言わないと、ニュースキャスターではない。古巣のテレビ局に対してよりなにより、視聴者の方々に失礼です。僕はジャーナリストあがりの筑紫哲也さんでもあるまいし、しゃべり屋です。海外取材経験、特派員経験を経て、英語がベラベラで国際情勢をたちどころに捉えてしゃべる人じゃない。それで“降ろされてもいい”、言うべきことを言うと、腹をくくりました」