心打たれた木村さんの生き様

 石川拓治氏の著書『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』(幻冬舎文庫) は、青森県在住のリンゴの自然栽培の第一人者で、11年の歳月をかけ、肥料・農薬を使わない自然農法によるリンゴ栽培を成功させた木村秋則さんの生き様と挑戦を綴った一冊である。2013年に阿部サダヲ主演で映画化されフィレンツェ映画祭で観客賞を受賞した。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)

──実際に読まれて、どんなところに感銘を受けたんですか?

「木村さんの生き様です。ひとつのコトを成し遂げる上で、家族や色々なモノを犠牲にし、巻き込んでしまっても、信念を持ってやり続けた……というのは、ただただ“凄い”のひと言に尽きましたね」

──木村さんの生き様に心打たれたということですが、農業については?

「僕の父がアスリートで母が栄養学を学んでいたので、食へのこだわりも強く、農家さんのところに実際に赴いて、農家さんから直接購入していたんです。農家の方々とお話しさせていただく機会もたくさんあって、小学生の頃から農業とは関わりを持っていました」

 工藤阿須加さんの父、公康さんはプロ野球界のレジェンド。食への強いこだわりがあることで知られ、48歳まで現役を続けた。その強靭な肉体を支えたのが雅子夫人で、『工藤家の元気が出る食卓:母ちゃんごはん「いただきます!」』(主婦と生活社)という著書もある。そんな環境に育った工藤さんは、東京農業大学に進学後に俳優として活動を始めた。そして自ら本格的に農業を始めるようになったのは2021年のことだった。

「大きなきっかけは、やっぱりコロナ禍でした。2020年の3月、4月頃は世の中が止まってしまったじゃないですか。あの時、僕の仕事は情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)での週1回の出演だけだったんです。家でずっとゲームをしたり、映画を観たり、宅配でジャンクなものを食べてしまったり……そんな生活をしていたんです。でも、その一方で自分と向き合う時間はいっぱいあって。自分がやりたかったことって何だろうって考えた時に、農業だったんです」

 役者としてキャリアアップを続け、仕事も脂がのってきた30歳のタイミングで山梨県にある農園の一部(広さは70R)を借り、農業を始めた。