「こんなことをして良かったのだろうか」呆然と立ち尽くす東出昌大が我に返った師匠の言葉
師匠の指示通りに刺すと、ようやく鹿は動かなくなった。
「“本当に撃っちゃった……。こんなことをして良かったのだろうか。……本当に獲ってしまった”と呆然としていたら、師匠から“早く運ばないと肉が傷むぞ”と言われて、ようやく我に返ったのが、初めての狩猟です。でも、言葉で語れることは15パーセントくらいで、あとの85パーセント……手に残った質感とか、血の熱さとか、鹿の息づかいなどは、経験しないとわからないと思います」
釣りでも、ついさっきまで生きて動いていたものの命を奪い、食べるという行為は同じだが、まったく違う経験なのだろうか。
「私は釣りもしますが、まったく違いますね。どうしてだろうと師匠に尋ねたら、“物体が大きくなると、それだけエネルギーも大きくなるから、エネルギーの跳ね返りも強い”と。師匠も“300キロのクマを仕留めたときは、本当にこんなことをして良かったのかと考えた”と言っていました」