二代目片岡秀太郎の強烈なアドバイス

ーーたしかに、だからこそ、観客にうっとりとするような激情が伝わってきます。

「そういえば、一昨年亡くなられた私が大好きだったおじさま、二代目片岡秀太郎のおじさまから、こんなことを言われたことがありました。あるとき私が殺される役をやっていると、“あんなあ、もっと、エロぉ~く死んでくれなアカン。エロぉ死んでや”って」

ーーエロく死ぬ……?

「そう。“そこまでやって初めて、綺麗に見えるんや。そうじゃなかったら見てられへんよ”と。

 おじさまらしい、洒落っ気を込めた仰り方。なぶり殺しにされるシーンだからこそ、なんですよね。逃げても逃げても捕まって、何度もいたぶられて殺されてしまう。そこに美しさがなければ、歌舞伎でやる意味がないんです。そこが面白さであり、美しさだと思います。」

ーー宝塚にも通じるものがありそうですね。

「宝塚さんも同じですよね。あれを、女の人がやるからかっこいいんです。男がやってごらんなさいよ。キザすぎるでしょう? いくらかっこいい男性だとしても、あんな目線で見られたらね。女方もそうです。女性がやると生々しくなりかねない所があるかもしれませんが、私たち女方がやるから露骨さを感じさせず、余白が生まれてそこに“品”が生まれるのではないでしょうか」

 男が女にCHANGEする。その根源にいる、400年以上前から美しさを追求し続けた先人たちの存在を、米吉さんは教えてくれるのだった。

■五代目 中村 米吉(ごだいめ なかむら よねきち)
1993年3月8日生。東京都出身。播磨屋。2000年に襲名し初舞台を踏んだ。2011年に女方を志し、2015年に『鳴神』で雲の絶間姫役を演じ十三夜会奨励賞を授賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。近年はバラエティ番組ほか、2023年1月よりドラマ『ママはバーテンダー~今宵も踊ろう~』(TBS系)で連続ドラマ初出演。WEBメディア「ステージナタリー」でコラム「中村米吉の#カワイイは世界を救う?」を連載している。またWEBラジオAuDeeでは『中村米吉の悪魔の時間』で甘いものを歌舞伎のお役に例えてご紹介。9月2日~25日に歌舞伎座にて「秀山祭九月大歌舞伎」に出演。