いま、歌舞伎界でもっとも注目されているといっても過言ではない女方がいる。中村米吉さんだ。昨年10月に『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)に初出演すると、その可愛らしい顔立ちと話し方が話題となり、「米吉さん」というワードがツイッター(現・X)トレンド入りしたほど。さらに”喋りすぎる女方”の異名を持ち、SNSのライブ配信や単独トークショーを行い、やわらかで上品な語り口からこぼれる少々の毒っ気が、ファンを沼に誘っている。そんな米吉さんの「THE CHANGE」とは。【第4回/全5回】

中村米吉 撮影/松野葉子

 最近ではゴールデンタイムのバラエティ番組に出演したりと、各方面で活躍している中村米吉さん。バラエティ番組に呼ばれるのは、「しゃべりすぎる女方」との異名を持つほど、口上手な背景がある。現にこの日の取材でも、淀みなく次々と言葉が紡がれる。

 そして、「さっきの話の続きなんですけど」と、「先輩がたが教えてくれるように、舞台が上手くできない」という葛藤を観客の存在が払拭し、米吉さんの考え方がCHANGEしたきっかけを教えてくれた。

ーー「先輩がたが教えてくれるように上手くできていない」という葛藤が吹っ切れたきっかけがあったのでしょうか。

「そうですね……。強いてお話しするとしたら、“浅草”なのかなぁ。『新春浅草歌舞伎』という公演があります。言い古した言葉ですが、“若手の登竜門”なんて言われています。その歴史は深く、中村吉右衛門のおじさまや、坂東玉三郎のおじさま、勘九郎時代の中村勘三郎のおじさまたちからはじまって、その後は、中村獅童兄さん、片岡愛之助兄さん、市川猿之助兄さん、中村勘九郎兄さん、七之助兄さん達といった少し上の先輩がとても盛り上げられて。最近では尾上松也兄さんを筆頭に私たちの世代にバトンタッチしていただいて、今に至っているんです」