浅草歌舞伎の独特な雰囲気

 米吉さんは2012年に同公演の舞台に初めて立っている。

「この公演は、いつもの歌舞伎とちょっと違う雰囲気なんです。“がんばっている若手を観に行こう”という、お客さまのなんとも言えない空気感がある。だからこそ、多少つたなくても熱気で乗り越えられそうな勢いがあります」

ーー歌舞伎座で歌舞伎を観るのと違い、応援する気持ちが大きいのでしょうか。

「そうですね。少し乱暴な言い方ですが、アイドルを見守る目線といいますか。それに明確に気づいたのは、同じお芝居の同じ役を、歌舞伎座でベテランのみなさんに囲まれてやったあと、浅草でやったときでした。“私は今まで、先輩たちに相当助けてもらっていたんだな”ということを如実に感じたんです」

中村米吉 撮影/松野葉子