「悔しいと思っていたのかもしれないけど」

――その時は悔しいという気持ちが一番にあったのでしょうか?

「悔しいと思っていたのかもしれないけど、当時は本当に生意気だったので、“全員、見る目ねぇな”と思っていたんです。でも今自分がこの年齢になっていろいろな社会経験をすると、“そりゃあこの役に自分を選ばないな、一緒に仕事をする仲間としても選ばれないよな”ということも色々分かってくるんですよ。もちろん、単純に自分の力不足で選ばれなかったこともありましたが、今はそれも含めて何とも思っていないですね。

 それに、お金が動くものにはいろんな力学が働く。そういうことを誰も教えてくれなかったので、もっと早く知れたら良かったなとも思いますが、まずは自分を知ってもらい、次に期待してもらって、その現場で成果を出して、また呼んでもらえるようにする。その繰り返しなんです」

――私もフリーランスなので、目の前にある仕事が次につながるかどうか、という意識は常にあります。

「僕らの仕事って、需要が仕事の量に直結するので、若い頃は『見る目ねぇな』と人のせいにして自分を納得させていたけど、仕事がない自分=需要がない、能力がない、魅力がない、期待してもらえないということにちゃんと向き合うタイミングがあったからこその今なんですよ。そういう全ての経験が糧になる仕事なので、笑って死んだもの勝ちだなって、最近本当に思います。

 自分が歳をとるのと同じだけ若い人たちも年を重ねていくじゃないですか。この間、まだ20代前半だと思っていた親戚の子に“今年が最後かな”と思ってお年玉を用意していたら、いつの間にか29歳になっていて驚いたんです(笑)。

 そうやってみんな同じだけの年月が流れて、僕もいつ死ぬか分からないけど、人生のすごろくであがるときに“あぁ、楽しかったな”って思えていればいいかなと思うんです。そう思えるために、今を一生懸命トライする。なので、悔しい思いも通過点だったなって思います」

中村倫也 撮影/有坂政晴