「何よりも、まずは自分が楽しんでいないといけない」

――あのシーンも凄みがありましたが(笑)、脚本とアドリブの境目が分からないように見せることが役者さんの力なんでしょうね。

「特にコメディは、役者の演技力のレベルが高くないとできないんだなと思いました。それに、笑わせにいくとどうしても滑ってしまうんですよね。なので、めちゃくちゃ真剣に、ただただ一生懸命に頑張ることで生まれてくる面白さがあるんだと感じました」

――「コメディが一番難しい」と言う役者さんも多いですが、倉さんはどんなところに難しさを感じますか?

「何よりも、まずは自分が楽しんでいないといけないし、コメディだからといって笑わせにいってはいけないのが、難しいところですね。その場で必死にやっている姿が滑稽で面白いんだという学びもありました。それに、福田監督の他の作品では結構“顔芸”もあるので、そういうテクニックをどんどん身につけていかないと、今後の福田監督作品ではちょっと戦えないなと思いました」

倉悠貴 撮影/三浦龍司

――もしいつか顔芸をやることになったら、何を参考に、どうやって練習しますか?
「まずは過去の作品を見て、鏡とにらめっこしながら、どの顔が面白いか探ると思います。でもきっと、実際にやってみるのとでは全然違うと思うんですよね」

――声や顔だけでお芝居をする機会もあると思うので、それもできると表現の幅がすごく広がりますね。

「そのために、今のうちから表情筋を柔らかくしておいたほうがいいのかもしれないですね(笑)。今作でも、皆さん“顔芸”がすごかったのですが、特にムロさんや後藤象二郎を演じた賀来賢人さんは顔の使い方がすごく上手だなと見ていて思いました。

 僕は『新解釈・幕末伝』が、ここ最近の福田監督作品の中で一番好きな作品になりました。“福田監督オールスターズ”みたいな迫力と贅沢さがあるし、オリジナル脚本で、好き放題やれるというのも初めての経験だったので、参加させてもらって本当に良かったです」

「今までは割と暗い役が多かったので」と本人が言うように、どちらかというと「陰」を感じる役を演じることが多い印象だったが、いつか倉さんも「福田組」の常連になる可能性もあるかもしれない。そう思うと、改めて倉さんの過去の出演作を辿って「喜劇役者」の要素が隠れていないか、見つけてみたくなった。

取材・文/根津香菜子

 

くら・ゆうき
1999年12月19日、大阪府生まれ。2019年に俳優デビューし、翌年『夏、至るころ』で映画初出演にして初主演を果たす。近年の主な出演作にドラマ『アイシー~瞬間記憶捜査・柊班~』、『スロウトレイン』、映画『六人の嘘つきな大学生』、『リライト』、『隣のステラ』、『平場の月』などがあるほか、待機作に、映画『恋愛裁判』(1月23日)、『教場 Requiem/Requiem』(2月20日)が控える。

■「新解釈・幕末伝」
脚本・監督:福田雄一、出演:ムロツヨシ、佐藤二朗、山田孝之、広瀬アリス、岩田剛典、松山ケンイチ、賀来賢人、染谷将太、勝地涼、矢本悠馬、倉悠貴、山下美月、小手伸也、高橋克実、市村正親、渡部篤郎ら。
2025年12月19日(金)より全国公開中。