3回のオリンピックを経験し、2001年の世界陸上ではスプリント種目の世界大会で日本人として初のメダルを獲得した為末大。競技への思考の深さから「走る哲学者」と称され、現役を引退してからはスポーツに関してのさまざまな提言で、たびたび話題になっている。スポーツに向き合ってきたその人生には、どんな「CHANGE」があったのだろうか。
【第5回/全5回】

為末大 撮影/三浦龍司

「最初は文章がうまくなりたくて」

 SNSで情報を発信するアスリートや元アスリートは多いが、為末大さんほど情報が濃く、支持されている人は多くない。SNSではほぼ毎日「長文ファンの皆様おはようございます」の呼びかけから始まる長い提言を投稿し、多くのいいねやコメントがついている。

為末「SNSはもともと、文章がうまくなりたくて始めたんです。うまい文章のお手本を考えたときに、新聞の社説なのではないか、と思ったんですよ。社説ってだいたい800文字から1000文字ぐらいなんですね。ツイッターだと、6個から7個ぐらいの投稿です。毎朝、考えをまとめて投稿することを自分に課して続けていけば、文章がうまくなるのではないかと思って、それで始めたのがきっかけですね」

 現在は長文の投稿が可能になったが、内容は精緻かつわかりやすくまとめられていて、建設的な返信が多くつけられている。

為末「ツイッター上で返されるものだけではなく、けっこうまわりで見てくれる人も多くて、後で“これについてはこう思うんだよね”と意見をもらうことも多いんですよ。そういうところから議論が始まるのは、すごく勉強になりますね」